脳 Brain, No Life(仮)

とあるニューロベンチャー企業の研究員のつぶやきを記録するブログ

心理学

メモ:後天的な記憶天才

「メモ」シリーズです。 今回は、頭部への外傷等で、後天的にサヴァン的な能力を獲得したと考えられている人々の紹介をします。 オーランド・セレル: アロンゾ・クレモンズ:造形芸術家 --------------------- オーランド・セレル(Orland Serrel) 1979年1…

涙もろいのは前頭葉のおとろえが原因か?(5):補足

ちなみに論文を探す際に障壁となるのがコトバです。 「涙もろい」というコトバから、「感情失禁・情動失禁」というコトバまではかなり距離があります。普通は知らなければ思いつかない表現です。私も今回調べてみるまでは「感情失禁」というコトバは知りませ…

涙もろいのは前頭葉のおとろえが原因か?(4)

涙もろさと前頭葉の関係について考えてきましたが、1番の問題は、涙もろさをどう測るかです。ダイレクトな「涙もろさ」尺度がないか検索したところ、「思いやり尺度」の中に涙もろさについての設問項目をみつけました。 質問内容には 「自分は涙もろいほう…

涙もろいのは前頭葉のおとろえが原因か?(3)

涙もろさと前頭葉の関係について考察している論文を探してみました。 日本語では1993年の症例研究に、明示的な言及がありました。 脳梗塞で前頭葉の血流の低下がみとめられた76歳の男性患者さんが、怒りっぽくなったりする「感情失禁」の症状を来したそうで…

涙もろいのは前頭葉のおとろえが原因か?(2)

つづきです。 涙もろさについて調べるため、検索エンジンを使って「涙もろい 前頭葉」で検索した結果、NAVERまとめの記事が引っかかりました。 NAVERまとめ「なぜ、歳を重ねるごとに涙もろくなるのでしょうか?」 http://matome.naver.jp/odai/2135151730125…

涙もろいのは前頭葉のおとろえが原因か?(1)

だいぶ以前のことですが、「年をとって涙もろくなるのは、感情をコントロールする前頭葉が衰えてくるため、涙がこらえられなくなるせいだ」という説をテレビで見ました。そのときは、「そういう研究結果が実際に存在するのだろうか?」と思いましたが、その…

メモ:サヴァン症候群の有名な例(3)

サヴァン症候群の例のつづきです。 リチャード・ワウロ(Richard Wawro, 1952-2006) スコットランドの自閉症の画家。クレヨンで描かれた風景画で有名。 白内障の手術のため、左目はほとんど視力を失っていた。 本やテレビなどで見た風景を、驚異的な記憶に…

メモ:サヴァン症候群の有名な例(2)

今日はこれから実験があり、いまはプログラムの最終チェック中です。 念のため、最後までプログラムが止まらずに動くかを確認しています。 ここのところ、実験が立て込んでいて、なかなかに神経を使います。 では、サヴァン症候群の例のつづきです。 スティ…

メモ:サヴァン症候群の有名な例(1)

メモシリーズです。 サヴァン症候群で有名な人々の中をご紹介します。 下記のような人たちがいます。 ・キム・ピーク:書籍などの記憶の達人。映画「レインマン」の登場人物のモデル。 ・スティーブン・ウィルシャー:フォトグラフィックメモリーと思しき記…

メモ:ソロモン・シェレシェフスキー(Solomon Veniaminovich Shereshevskii)

シェレシェフスキーの能力について研究をおこなったのは神経科学者のルリヤである。シェレシェフスキーは、彼の名前の頭文字にちなんで、S(「エス」または「シー、シィー」(ロシア語でSはシーと発音する))と呼ばれていた。 シェレシェフスキーはモスクワ…

メモ:共感覚とフォトグラフィック・メモリー

五感というコトバがあるように、視覚・聴覚・触覚・味覚・嗅覚は、別々の感覚として感じられる。しかし、数字を見ると色が見えたり、音を聞くと触覚や味覚を感じたりといった、ある刺激が本来引き起こす感覚とは別の感覚を引き起こすことがある。これを共感…

迷信行動:続々

タイトルは今回の内容とはほとんど関係ないのですが、昨日のつづきということで。(タイトルを書いていてふと、「続々・三匹が斬る!」を思い出しました。) 昨日のエントリーでは、ヒトは近接した出来事の間に(勝手な)因果関係を見出してしまい、場合によ…

迷信行動

いつもは赤ペンを使って競馬新聞を読んでいたギャンブラーが、ある日、赤ペンを忘れてしまい、仕方なくそのとき持っていた黒いボールペンで順位予想を行ったら見事的中。その後、彼は競馬の予想の際には黒いボールペンを使うようになった。当たりの頻度は以…

調査の手順:同意書

参加者に、調査会場まで来ていただき、心理実験や脳機能計測を行う場合には、事前に同意書に記入をいただいています。 調査説明書をもちいて、下記の事項の説明を参加者の方々に対しておこない、内容についてよく理解をいただいたうえで、同意書にサインをい…

メモ:後天的サヴァン(2)

今日も午後からずっと仕事です。 某報告書をまとめてます。 では昨日のつづきです。 私たち一般人は、左脳が働いているので、物事を記号的に捉えようとする傾向がある。そのため、(画家やデザイナーのような特殊な職業の人を除けば)人や家や車の絵を書くと…

メモ:後天的サヴァン(1)

メモシリーズです。 今回は後天的サヴァンについて。 3歳くらいの幼い頃の事故など、ごく年若いうちのハプニングによって、驚異的な記憶力を獲得した人たちがいる。脳の損傷による後天的な才能の開花は、サヴァンと同様、記憶力に限らない。芸術的才能、数…

メモ:サヴァン症候群(2)

つづきです。 サヴァン症候群というと、前述したように、知能の発達の遅れをともなう(IQが50前後)という印象があるが、実際には知能が低い人たちばかりではなく、IQが100を超える事例も知られている。高い知能を持つ自閉症スペクトル障害である、アスペル…

メモ:サヴァン症候群(1)

ちょっと実験が立て込んでいるため、 以前書いたメモ書きで更新します。 自閉症や脳障害を負っていて、知能は非常に低く、(言語的、対人的)コミュニケーション能力も極めて低いにもかかわらず、記憶力や芸術的に際立った才能を発揮する人たちがいることが…

温罨法(おんあんぽう)で視機能、作業効率が改善

昨日のエントリーでは、温罨法によるマイボーム腺の詰まりの解消(=ドライアイの改善)についての研究をご紹介しました。 VDT作業に携わる男性オフィスワーカー7名に対して、蒸しタオルの使用(=眼の周囲を蒸しタオルで温める)により、「目の乾き、疲れ…

Mensaに挑戦?:IQテスト

MensaはIQが上位2%の人が入会できる団体です。 (入会のための視覚基準は各国で異なるようですが、 各国の上位2%のIQの人が入会できるそうです。Wikipediaより。) IQだけが知性の尺度ではないとはいえ、自分のIQがどれくらいなのかについてはときどき、…

修行の効果:デフォルトモードネットワークの活動が低下する(3)

【デフォルト・モード・ネットワークについて】 DMNに含まれる脳領域: 内側前頭皮質、楔前部、後部帯状皮質、下頭頂小葉、(海馬を含む)内側側頭葉(ないそくそくとうよう)、そして外側側頭皮質(がいそくそくとうひしつ) DMNは、自己参照評価、自伝的記…

修行の効果:デフォルトモードネットワークの活動が低下する(2)

もうかれこれ10日以上、右目にチックが出ていて正直困っています。 おとといあたりようやくほとんど出なくなってきたかな…と思ったら またピクピクっと。。ううむ、、修行が必要ですね(笑) つづきです。 DMNは、内側前頭皮質、楔前部、後部帯状皮質、下頭…

修行の効果:デフォルトモードネットワークの活動が低下する(1)

以前のエントリーで、瞑想により海馬が活性化する効果があるという研究をご紹介しました。今回は、ある種の修行がデフォルトモードネットワークを沈静化するというお話しを紹介したいと思います。 マントラに類似のごく短い単語をくり返し発話すると、デフォ…

すこし長めのひとりごと(4)

ここ数回のエントリーは結末を探りながら書いていたのですが、うまく収束していかないですね。 ときどきアタマをよぎることなのですが、脳科学や心理学ではN=1だったり、1 trial(single trial)のデータでどこまで何が言えるのかが気になっているという背景…

すこし長めのひとりごと(3)

もちろん、N=1の研究がまったくなくなったわけではありません。 たとえば2006年、Neurocaseに発表された論文は、AJ(研究報告上の仮名で、後に本名が明らかにされた)という人物の極めて優れたエピソード記憶について報告をしています。HMなどもそうですが、…

すこし長めのひとりごと(2)

続きです。 また、心理学研究の再現性は5割位という話題があります(注2)が、これは統計的な観点(注3)と手続き上の観点から考える必要があると思います(たとえば、参加者は教示をきちんと理解していたのか、ある課題に取り組むのにどのような方略を用…

すこし長めのひとりごと(1)

昨日のエントリーを書いていて、ふと、「最近、参加者数が少ない論文を見かけなくなったけど、どういう事情があるのだろうか」と思いました。その感想を膨らませたところ、ちょっと長めの文章になったので、2〜3回に分けてお届けします。まだ最後まで書き…

記憶の定着のためには睡眠が重要

受験シーズンですね。 世の中には「寝る間を惜しんで」学業に打ち込んでいる(きた)学生さんも多いかもしれません。「1時間の睡眠を削れば、1時間分多く勉強ができる」そう思って勉強を頑張ってきた人も多いことでしょう。 しかし、睡眠不足は学習・記憶…

心地よい香りについての近赤外線分光法(NIRS)研究

「母乳やバニラの香りは、乳児の前頭葉の血流の増加を引き起こす(NIRS研究)」 言葉を話せない赤ちゃんは、香りをどう感じているのでしょうか? 感想を直に訊くことはできませんが、脳の反応なら調べることができます。 実際、生後間もない乳児を対象にNIRS…

心地よい香りについての脳波(EEG)研究

「心地よい香りは脳波の前頭部非対称性を左脳優位に(EEG研究)」 香りの心地よさを脳波で調べることはできるのでしょうか? ポジティブ感情や接近動機に関係すると考えられている前頭部非対称性をもちいて、香りの心地よさを分析した研究があります。 参加…