脳 Brain, No Life(仮)

とあるニューロベンチャー企業の研究員のつぶやきを記録するブログ

心理学

音楽を聴いているときの脳活動

今回も2本立てで、音楽とそれを聴いているときの脳活動の関係性についてご紹介します。 「感動する音楽はドーパミン神経を活性化する(fMRI, PET研究)」 参加者に感動して鳥肌が立つ(chillが起きる)音楽を持ってきてもらい、それを聴いている際の脳活動…

青色光の眠気低減効果について:脳波(EEG)研究とメラトニン分泌量の計測

青色光に関する研究の紹介。短めの内容を2本立てでお届けします。 「青色光(波長460nm)で、注意力が向上、眠気が低減する(EEG研究)」 青色光は眠気を覚ます効果があると言われています。 これに関して、実際に調査参加者に青色光を浴びせて効果を調べた…

中程度の瞑想の修行を積むと、瞑想中に海馬が活動するようになる(3)

実験の結果です。 結果: 中程度に経験のある瞑想者の瞑想中(無言のマントラ瞑想中)に、もっとも統計的に有意な活動が見られたのは、右の海馬でした。その他の部位として、両側の中帯状回、両側の中心前回、そして右の楔前部が活動しました。 ワード条件で…

心地よい香りは、内側眼窩前頭皮質の活動を高める(fMRI研究)

心地よい香りと不快な香りを嗅いだときの主観的な感覚は大きく異なります。 さて、脳の反応にはどのような違いがあるのでしょうか? Rollsらは、fMRIを用いて検証実験をおこないました。 実験では、参加者に心地よい香り(pleasant odor)と不快な香り(unpl…

心地よい香りは、側坐核(ドーパミン神経系)の活動を高める(PET研究)

心地よい香りは、気分をポジティブにしてくれます。ポジティブな行動にいざなってくれることもあるでしょう。 では、心地よい香りは(不快な香りに比べて)報酬系の活動を高めてくれるのでしょうか? (統合失調症の患者と、)健康なボランティアの参加者に…

テクノ・ミュージックは、若い人の(血中の)ノルエピネフリンやβエンドルフィンの濃度を高める(血中ホルモン測定研究)

音楽を聴くと気分が変化します。 この際、体内ではどのような変化が起きているのでしょうか? それを調べた研究をご紹介します。 若い調査参加者に、テクノ・ミュージックを健康なボランティアに聴かせたところ、血中のノルエピネフリン(ノルアドレナリン)…

加齢による脳波の変化

これまでの研究から、加齢により、脳波のパワーは小さくなり、背景活動の周波数も遅くなること、また、加齢によって、P300の振幅は小さくなり、潜時は大きくなることが知られています。 しかし、normal agingにおいてEEGとERPの測度の間の統計的な関係性を示…

ランナーズハイとエンドルフィン(2)

エンドルフィンがランナーズハイの原因であることを調べるために、 Boeckerらは、ランニングによって脳の中でエンドルフィンが分泌されているのかをPET(陽電子放射断層撮影)を利用して検証しました。 参加者は10人、約2時間ランニングをしました。 走った…

ランナーズハイとエンドルフィン(1)

お正月からもうだいぶ時間が経ってしまいましたがみなさんは箱根駅伝は見られましたでしょうか?私は、ちらちらとは見ました。今年も青学が圧倒的な強さで優勝しましたね。どんなトレーニングを積んでいるのか、どのように練習に取り組んでいるのか、組織マ…

リハビリに取り組むときは前向きに

脊髄損傷後のリハビリに、患者さんがモチベーションをもって取り組むと 回復が促進されるという事実が以前から知られていました。 しかし、その神経的なメカニズムはよくわかっていませんでした。 報酬系の一部である側坐核は、 モチベーションによって引き…

かゆみを脳への電気刺激で抑える

冬になると空気が乾燥してかゆみが出て困りますね。 肌を保湿したり、かゆみ止めを利用したり さまざまな方策を取られている方も多いことでしょう。 かゆみについて生理学研究所の研究者らが興味深い発見をしました。 経頭蓋直流電気刺激法(tDCS)と呼ばれ…

笑顔でハッピーに(1)

悲しいから泣く(キャノン=バード説)のか、泣くから悲しい(ジェームズ=ランゲ説)のかは古くからある感情研究における2大仮説です。 今回は、幸福度研究との関連で、身体から感情への影響(ジェームズ=ランゲ説)に関する古典的研究(古典的方法)につい…

没頭感と幸福感

体調を崩して倒れており、更新を忘れていました。 記事の更新を楽しみにされているみなさん、すみませんでした。 2日分、更新しました。お楽しみくださいませ。 ーーーーーーーーーーー 作家の村上春樹さんが次のようなことを語ったそうです。 「集中力は、…

ベストの追求は、幸福度を下げてしまうこともある

世の中には、maximizers(最大化を目指すヒト)とsatisficers(満足化を目指すヒト)の2種類の人間がいます。 Maximizersは、満足の最大化を目指すヒトです。ショッピングの際に、自分の選択肢をくまなく比較して、自分にとって最も高い満足度をもたらして…

「モノより思い出」

「モノより思い出」。1999年からつづく日産セレナのCMのキャッチコピーです。モノを買うより、たくさんの経験をして心豊かになろうというメッセージですね。ただ思い出づくりのお出かけのためにはクルマを買わなければならないわけですが(笑) さて、モノ(…

人生におけるストレスフルな出来事に対する耐性と遺伝子の関係

人生にはさまざまな出来事(event)が起こります。 楽しい出来事もあれば、つらい出来事もあるでしょう。 つらかったり悲しかったりするストレスフルな出来事が続けば、うつ病を発症する可能性が高くなります。 しかし、つらい出来事を経験したからといって…

幸せはどう測る?:ディーナーの人生満足尺度

昨日のエントリーでは、幸福感は(ある範囲で)伝播する(happy な人は身近な人をhappyにする)、という話題を取り上げました。 このような研究を行う場合には、そもそも幸福感(happiness, well-being)などを何らかの形で測定しなければなりません。研究者…

幸せは社会的ネットワークをとおして拡散する(2)

つづきです。 この調査でいくつかのことがわかりました。 このグラフの黄色は幸せな人、緑色は中くらいの人、青色は幸せ度の低い人を表します。パッと見てわかるのは、幸せな人は幸せな人が身近にいて、幸せ度の低い人は幸せ度の低い人が身近にいるというこ…

幸せは社会的ネットワークをとおして拡散する(1)

感情が直接に周囲の人に影響を与えることは知られていましたが、社会的なネットワークを通して幸福(happiness)がどのように広がっていくかは未知の問題でした。 FowlerとChristakisは、Framingham Heart Studyのデータを用いて、この問題を検証しました。 …

認知課題いろいろ(13)

認知課題の紹介です。 【認知課題(24)】連続引き算課題(serial sevenとserial threeの2種類) 7を連続で引いていく課題 引き算を連続しておこなう課題。2分間つづく。 7を順番に引いていく。参加者は、なるべく速く答えをナンバーキーを使って打ち込…

認知課題いろいろ(12)

今年も最終週ですね。 論文で見かけた認知課題の紹介を続けます。 【認知課題(21)】Inspection Time (IT) 課題: キューが500ミリ秒間提示された後、 右側or左側が欠けた刺激がごく短時間(10-200ms)提示され、 その後、マスク刺激が提示される。 参加者…

歩く速さが遅くなった人は要注意

近年、歩行速度の遅さと認知症状によって特徴づけられる運動認知リスク症候群(motoric cognitive risk syndrome, MCR)が、認知症の専門家から大きな注目を集めています。 歩行速度が遅く、記憶力などの認知機能に不安のある人は、 認知症発症リスクが高く…

認知課題いろいろ(11)

【認知課題(20)】くり返し数字ヴィジランス課題 Repeated digits vigilance task この視覚認知ヴィジランス課題は、不規則な間隔で現れるターゲットを検出する能力を測定する。参加者に対して、3つの連続した数字(例:473)が、1分間に100個の割合でスク…

認知課題いろいろ(10)

【認知課題(19)】Categoric search Broadbent et al. (1986, 1989)による先述(※昨日のエントリーを参照ください)のFocused attention課題に似た課題である。 Focused attention taskでディストラクターが提示された2つの場所(2.04もしくは5.20度離れて…

認知課題いろいろ(9)

認知課題の紹介、つづきです。 【認知課題(17)】焦点注意を測る課題(Focused attention課題) この選択反応時間課題はBroadbent et al. (1986, 1989)によって開発された。 ターゲットの文字は、大文字のAかBであり、スクリーンの中央に表示される。 参加…

認知課題いろいろ(8)

昨日、更新が遅れて、日付ダブってしまいました。。 認知課題のご紹介、続きです。 【認知課題(16)】衝動性を抑える能力を測る課題(Impulsivity) ボタンを押したいという衝動性を抑えられる能力を測る課題です。 これも前頭葉の機能です。 Leark et al. …

認知課題いろいろ(7)

認知課題の紹介です 【認知課題(14)】注意をフォーカスする能力を測る課題(Focus of attention) Eriksen and Eriksen 1974で開発された two-choice reaction time taskに基づく。 各試行の最初に、 モニターに500ms間、3つのwarning crossesが提示され、…

認知課題いろいろ(6)

認知課題いろいろシリーズのつづきです。 名前が同じでも、詳細が異なる課題があります。 【認知課題(12)】Memory課題(immediate and delayed recall) 15個の単語が1個ずつ提示される。提示時間は1秒、ISIも1秒である。 単語は名詞、4〜7文字から構成…

ゲームの最初の実験

ゲームの実験を生身の人間を参加者として最初に行った(と考えられる)のが、1950年頃ランド研究所に所属していたメリル・フラッドとメルヴィン・ドレッシャーの2人の研究者です。 彼らは、2人の参加者に対して、とあるゲームの利得表を提示して、実験を行…

訳語について(2)

これは、ultimatum gameについてだけに留まる話題ではありません。 囚人のジレンマはどうでしょうか? 先日、囚人のジレンマのゲームの利得表を紹介しましたが、それを再掲します。 ゲームの表側にある2つのコトバ(「黙秘する」と「自白する」)は、プレイ…