脳 Brain, No Life(仮)

とあるニューロベンチャー企業の研究員のつぶやきを記録するブログ

メモ:共感覚とフォトグラフィック・メモリー

五感というコトバがあるように、視覚・聴覚・触覚・味覚・嗅覚は、別々の感覚として感じられる。しかし、数字を見ると色が見えたり、音を聞くと触覚や味覚を感じたりといった、ある刺激が本来引き起こす感覚とは別の感覚を引き起こすことがある。これを共感…

迷信行動:続々々

ある種の政策(金融政策など)の効果に対する誤認についてのたとえ話を思いつきました。 風邪をひいたあとにすぐ風邪薬を飲んだとします。しかし、風邪の症状はどんどん悪化します。 このとき、風邪薬を飲んだ直後から、風邪の症状が悪化するために、風邪薬…

迷信行動:続々

タイトルは今回の内容とはほとんど関係ないのですが、昨日のつづきということで。(タイトルを書いていてふと、「続々・三匹が斬る!」を思い出しました。) 昨日のエントリーでは、ヒトは近接した出来事の間に(勝手な)因果関係を見出してしまい、場合によ…

迷信行動:続

昼間に職場の近くを歩いていたら、信号待ちのトラックが信号が青に変わっても発車せずにいるところに遭遇しました。トラックにはドライバーの他、助手席に同乗者がいて、運転手は前をじっと見ているのに、信号が変わったことに気づいていないようでした。 し…

迷信行動

いつもは赤ペンを使って競馬新聞を読んでいたギャンブラーが、ある日、赤ペンを忘れてしまい、仕方なくそのとき持っていた黒いボールペンで順位予想を行ったら見事的中。その後、彼は競馬の予想の際には黒いボールペンを使うようになった。当たりの頻度は以…

ネガティブ・リザルト用のジャーナルがあれば・・・(2)

昨日は、日が変わってからの更新になってしまいました。 失礼いたしました。 前回のつづきです。 1905年になって、アインシュタインは今日、特殊相対性理論の名称で呼ばれる理論を提唱します。これにより、エーテルは存在しないことが明らかになりました。 …

御礼:10000アクセス

本ブログのアクセスが、10000アクセスを突破しました。 ご愛顧いただきありがとうございます! 引き続きよろしくお願いいたします。

ネガティブ・リザルト用のジャーナルがあれば・・・(1)

科学の世界にネガティブ・リザルト(negative result)というコトバがあります。たとえば、トマトに血液サラサラ効果があると期待されたとします。しかし、実際に実験をしてみたら、そのような効果は認められなかった。このような結果をネガティブ・リザルト…

調査の手順:同意書

参加者に、調査会場まで来ていただき、心理実験や脳機能計測を行う場合には、事前に同意書に記入をいただいています。 調査説明書をもちいて、下記の事項の説明を参加者の方々に対しておこない、内容についてよく理解をいただいたうえで、同意書にサインをい…

眼瞼ミオキミア

以前のエントリーに、「右目にチックが出て止まらない」と書いたのですが、ようやく昨日、3週間以上悩まされたチックが出ずに済みました。(これまではチックが出ても数日でおさまっていたので、こんなにも続いたのは初めてで、それなりに困っていた(困惑…

メモ:後天的サヴァン(2)

今日も午後からずっと仕事です。 某報告書をまとめてます。 では昨日のつづきです。 私たち一般人は、左脳が働いているので、物事を記号的に捉えようとする傾向がある。そのため、(画家やデザイナーのような特殊な職業の人を除けば)人や家や車の絵を書くと…

メモ:後天的サヴァン(1)

メモシリーズです。 今回は後天的サヴァンについて。 3歳くらいの幼い頃の事故など、ごく年若いうちのハプニングによって、驚異的な記憶力を獲得した人たちがいる。脳の損傷による後天的な才能の開花は、サヴァンと同様、記憶力に限らない。芸術的才能、数…

調査の流れ

昨日は、某所にて脳波計測を含む調査を行ってきました。 9時に現地入りし準備を始め、19時までに12人の参加者のデータをとるという強行軍でした(実際には1名キャンセルとなり、11名のデータを取得しました)。 そんなこともあり、 今回は、調査(実験)の流…

メモ:サヴァン症候群(2)

つづきです。 サヴァン症候群というと、前述したように、知能の発達の遅れをともなう(IQが50前後)という印象があるが、実際には知能が低い人たちばかりではなく、IQが100を超える事例も知られている。高い知能を持つ自閉症スペクトル障害である、アスペル…

メモ:サヴァン症候群(1)

ちょっと実験が立て込んでいるため、 以前書いたメモ書きで更新します。 自閉症や脳障害を負っていて、知能は非常に低く、(言語的、対人的)コミュニケーション能力も極めて低いにもかかわらず、記憶力や芸術的に際立った才能を発揮する人たちがいることが…

温罨法(おんあんぽう)で視機能、作業効率が改善

昨日のエントリーでは、温罨法によるマイボーム腺の詰まりの解消(=ドライアイの改善)についての研究をご紹介しました。 VDT作業に携わる男性オフィスワーカー7名に対して、蒸しタオルの使用(=眼の周囲を蒸しタオルで温める)により、「目の乾き、疲れ…

温罨法(おんあんぽう)でドライアイに対処

日本におけるドライアイ患者の数は1000万人を超えるともいわれています。 ドライアイの原因はさまざまですが、眼を保護している涙の層のもっとも外側の油層が不安定になり、涙がすぐに蒸発してしまうことが原因となるものがあります。涙の成分だけでは乾燥し…

血液1滴でアルツハイマー病診断

そういえば、2年ほど前に血液1滴でアルツハイマー病の原因物質であるβアミロイドを検知できる装置の話が出ていました。 「アルツハイマー病も血液1滴で検査」 http://news.mynavi.jp/news/2014/01/24/052/ 愛知県、国立長寿医療研究センター、豊橋技術科学…

Mensaに挑戦?:IQテスト

MensaはIQが上位2%の人が入会できる団体です。 (入会のための視覚基準は各国で異なるようですが、 各国の上位2%のIQの人が入会できるそうです。Wikipediaより。) IQだけが知性の尺度ではないとはいえ、自分のIQがどれくらいなのかについてはときどき、…

10分間のペダル漕ぎ(低強度の有酸素運動)が認知機能を高める

多くの研究が運動の認知機能改善効果を明らかにしてきました。 認知症予防や気分障害改善など、さまざまな効能が期待されます。 しかし、1日何十分、週何回以上、という規則を守るのはなかなか大変なもの。 もっと短い運動時間で手軽に認知機能改善効果を得…

環境光は情動処理に影響を与える

(特に北欧などでは)冬になると日光の暴露量が減ることで、季節性うつ病が起こることが知られています。これに対する治療法のひとつが、高照度光療法です。つまり、強い光に当たることが、気分障害の軽減に役立つというわけです。 このように光が長期的な気…

修行の効果:デフォルトモードネットワークの活動が低下する(5)

結果のつづきです。 RSのときに、安静時(Rest)に比べて活動が下がった領域が緑や青で示されています。(緑の方が活動の低下が大きいのです) 赤線で囲ったのがDMN(デフォルト・モード・ネットワーク)の領域です。 -------------------------------------…

修行の効果:デフォルトモードネットワークの活動が低下する(4)

【結果】 RSにより、神経活動が下がった領域は、下記の図に示したとおりです。 皮質(=大脳新皮質=脳の表面の進化的に発達した部位)の領域も、 皮質下(=大脳新皮質に覆われた原始的な脳の領域。生命の維持や、食欲の調節、運動の実行、睡眠の調節などな…

修行の効果:デフォルトモードネットワークの活動が低下する(3)

【デフォルト・モード・ネットワークについて】 DMNに含まれる脳領域: 内側前頭皮質、楔前部、後部帯状皮質、下頭頂小葉、(海馬を含む)内側側頭葉(ないそくそくとうよう)、そして外側側頭皮質(がいそくそくとうひしつ) DMNは、自己参照評価、自伝的記…

修行の効果:デフォルトモードネットワークの活動が低下する(2)

もうかれこれ10日以上、右目にチックが出ていて正直困っています。 おとといあたりようやくほとんど出なくなってきたかな…と思ったら またピクピクっと。。ううむ、、修行が必要ですね(笑) つづきです。 DMNは、内側前頭皮質、楔前部、後部帯状皮質、下頭…

修行の効果:デフォルトモードネットワークの活動が低下する(1)

以前のエントリーで、瞑想により海馬が活性化する効果があるという研究をご紹介しました。今回は、ある種の修行がデフォルトモードネットワークを沈静化するというお話しを紹介したいと思います。 マントラに類似のごく短い単語をくり返し発話すると、デフォ…

すこし長めのひとりごと(4)

ここ数回のエントリーは結末を探りながら書いていたのですが、うまく収束していかないですね。 ときどきアタマをよぎることなのですが、脳科学や心理学ではN=1だったり、1 trial(single trial)のデータでどこまで何が言えるのかが気になっているという背景…

すこし長めのひとりごと(3)

もちろん、N=1の研究がまったくなくなったわけではありません。 たとえば2006年、Neurocaseに発表された論文は、AJ(研究報告上の仮名で、後に本名が明らかにされた)という人物の極めて優れたエピソード記憶について報告をしています。HMなどもそうですが、…

すこし長めのひとりごと(2)

続きです。 また、心理学研究の再現性は5割位という話題があります(注2)が、これは統計的な観点(注3)と手続き上の観点から考える必要があると思います(たとえば、参加者は教示をきちんと理解していたのか、ある課題に取り組むのにどのような方略を用…

すこし長めのひとりごと(1)

昨日のエントリーを書いていて、ふと、「最近、参加者数が少ない論文を見かけなくなったけど、どういう事情があるのだろうか」と思いました。その感想を膨らませたところ、ちょっと長めの文章になったので、2〜3回に分けてお届けします。まだ最後まで書き…