脳 Brain, No Life(仮)

とあるニューロベンチャー企業の研究員のつぶやきを記録するブログ

心理学や脳科学をどう活かす?(2)

心理学や脳科学を応用して調査をおこなう場合、どのような点に留意する必要があると考えられるでしょうか?

 

心理学も脳科学も科学の一分野であるため、科学的な一連のお作法に則って調査・研究を行う必要があります。

 

すなわち、

 

「目的」を明らかにし、

「作業仮説」を立て、

「実験(調査)計画」を練り、

「実験(調査)課題」を作成し、

「実験(実査)」を実施し、

「データ解析」により結果を出し、

「考察(結果の解釈)」を行う、

 

という一連の手順を踏むことになります。

 

これらすべてのステップにおいて、

心理学や脳科学の知識にもとづいて考え、

さまざまな準備をする必要があります。

 

 

「目的」とは、調査・研究の目的のことです。

目的を立てることで、調査の方向性が定まります。

(例:新製品Aのリラックス効果を明らかにすること)

 

 

「作業仮説」とは、研究を進める上で暫定的に立てる仮説のことで、

調査計画を立案する上での基盤になります。

(例:

新製品Aの使用により、作業後の安静時のリラックス効果が高まる。

このとき、主観的なリラックス度が上昇するとともに、

脳波のアルファ帯域パワーが増えると予想される)

 

「実験計画」は、調査目的の達成や仮説の検証のための効率的・科学的な方法を、

その後の解析まで念頭に置いて、構築することを指します。

(例:参加者はランダムに2群に分け、それぞれ製品Aと製品Bを使用してもらう。

リッラクスに関するデータを取得し、群間で差があるかを統計的に検討する。)

 

 

「実験課題」とは、調査をおこなう際に参加者に取り組んでもらう課題のことです。

調査目的を達成するために適切な課題を選定する必要があります。

 

心理学や脳科学では、多種多様な課題が考案されています。

今後、本ブログでも紹介していきたいと思います。

 

(例:

類似の先行知見にもとづき、ストレスを与える課題としては

多数の計算課題を連続して問いてもらうことが有効と考えられる)

 

 

 

「実験(実査)」では、ヒトを対象とした実験を行うことになります。

これは仮説が正しいかを検証するために行われます。

 

ヒトを対象とした実験では、

実験をうまくおこなうためのテクニックやコツが重要であることもさることながら、

参加者の人権や尊厳に配慮した「倫理性」が重視されます。

 

なお、調査参加者に心理的な圧迫感を与えないために、

実験ではなく「調査」、「実査」などという表現に置き換えることもあります。

 

 

「データ解析」では、実験によって得られた各種データを、適切な方法に則って分析します。

 

脳波計測などにより取得した生理計測データにはノイズが乗っているため、データ取得後にノイズ除去等のデータのクリーニングを行う必要があります。これもデータ解析の一部になります。

 

「考察」とは、得られた結果にもとづき、当該の調査からどんなことが言えるのかを議論することを指し、調査全体での結論を述べることになります。

 

 

ここまでの作業をこなすことにより、調査目的を立ててから、結論を出すまでの全ての手順が完遂されたことになります。

 

 

調査が純粋に学術的なものの場合、自分なりの問題意識にもとづきつつ、多くの先行知見を参照し、科学のフロンティアを広げることを目指すことになります。

 

一方、調査目的が製品評価などを含めた実社会での応用研究という場合には、用いた課題や手法、調査結果の新しさ(新奇性)にはさほど重きが置かれないことが多いようです。どちらかというと、学術研究等ですでにestablishされた課題をうまく応用して、目的とする検証がうまくできるかどうかという点が重要視される傾向にあります。

 

いずれにしても、過去の研究知見の蓄積の上に、調査設計を行うことが重要であると言えるでしょう。

 

 

【今回のテーマに関する評価】

実現度:(評価なし)

有用度:(評価なし)