ヒトの心に迫るための3つの計測方法
「脳を調べれば、心の中を丸裸にできるのですか?」
脳波計測など、脳機能計測をおこなっていると、よく飛んでくる質問です。
これから脳波計測を開始します、という段になって、冗談半分に「思っていることがすべてわかっちゃうのかしら」とおっしゃる方もいます。
脳機能計測に対する期待と不安と好奇とが入り混じった複雑な気持ちが、そのようなセリフとなってぽろりとこぼれ出てくるのですね。
そんなときには、「いえいえ、心の中をすっかり覗けるほどには、脳機能計測は発達していませんよ」とお話しするようにしています。
実際のところ、(脳機能計測は、言語報告や行動(behavior=外部から観察可能な「ふるまい」)からは得ることのできない貴重な情報をもたらしてくれることは確かですが、)脳波やfMRIのデータ単独では、調査参加者の心の中身に迫ることはできません。
どのような研究・調査も、脳活動の計測のような生理計測だけではなく、行動計測と主観計測を組み合わせることで、脳活動の意味を理解し、ヒトの心を総合的に解釈することができるようになるのです。
一般に生理心理学や脳科学では、
主観計測、行動計測、生理計測の3つの方法を駆使することで
調査参加者の心の動きに迫ります。
「主観計測」では、調査参加者が意識的に経験し、感じ、思ったことを言語報告などの形で表出してもらいます。
「行動計測」では、認知実験や行動観察を通して、観察可能な参加者のふるまい(behavior)を記録します。
「生理計測」では、脳波や心拍など、主観データでも行動データでもない、生体情報を取得します。
そして、いずれの計測をおこなうにも、専門的な知識やコツが必要となります。
ただ漠然と脳活動を測っても、そこから調査対象者の心の中身に迫れるわけではありません。どのような実験状況を設定して、どのような課題に取り組んでいるときに、どのような調査刺激に対して、どのような脳活動が現れたのか、それを読み解いていくことが研究者の役割なのです。
本ブログでも、これらの計測方法のコツや実際についてご紹介していきたいと思っています。