脳 Brain, No Life(仮)

とあるニューロベンチャー企業の研究員のつぶやきを記録するブログ

実験計画の立案について(1)

心理学や脳科学では、ある要因の効果を定量的に検証することが調査・研究の典型的なケースとして挙げられます。

 

このような調査を行う際には適切な実験計画の策定が欠かせません。

 

ここでは、睡眠時間が作業効率に影響を与えるかどうかを検証するという架空の調査例を通して、実験計画について考えてみたいと思います。

 

その1:実験を通して明らかにしたいことは何かを考える

 

実験を行うときには目的があります。

つまり何かを明らかにするために実験をするわけです。

 

今回の例では、実験を通して示したいことは次のように簡潔にまとめることができるでしょう。

 

「睡眠時間が十分であれば作業効率は高く、

睡眠時間が不十分であれば作業効率は低くなる」

 

 

その2:条件数を考える

 

実験の目指すべき結果は上のようになりました。

では、どのような実験計画を立てれば、最終的にたしかに睡眠時間が作業効率に影響を与えた、ということが結論づけられるのでしょうか。

 

まず問題になるのは条件の数をいくつにするか、ということです。

 

睡眠時間の長さが作業効率に影響を与える、ことを調べたいのですから、睡眠時間が長い場合と短い場合の2つの条件間の差を比べるというのが最もシンプルな方法ということになります。

 

 

その3:参加者間計画か参加者内計画かを決める

 

条件の数が決まったあとは、それらの条件にどのように参加者を割り振るかを考えます。多数の人を集めて、それらの人を別々の条件に参加してもらうのか、同じ人たちに全ての条件に参加してもらうのかを考える必要があります。

 

さきほど決めた2条件での検証を前提に考えてみましょう。

この場合、以下の2通りの方法が挙げられます。

 

1つめの方法は、睡眠時間が十分なグループと不十分なグループを2種類用意して、難易度の変わらない課題に挑戦してもらい、その成績を比較するというものです。

この場合、複数の参加者グループの間の成績の比較を行うことになります。これは「参加者間計画」と呼ばれます。

 

別のやり方として、同一の参加者グループに、睡眠充足と睡眠不足との2条件に参加してもらい、課題成績を比較する、という方法もあり得るでしょう。この場合は、「参加者内計画」と呼ばれます。こちらの参加者内計画の方が、個人の能力のバラツキをコントロールできるため、統計的な検証を行う場合に有利になることがあります。

 

 

(2)につづきます