脳 Brain, No Life(仮)

とあるニューロベンチャー企業の研究員のつぶやきを記録するブログ

実験計画の立案について(2)

その4:課題を決める

 

データをとるためには、適切な課題を準備する必要があります。

今回の例では、睡眠時間が課題成績に及ぼす影響を調べることなので、睡眠が削られると成績が悪くなるような課題が適していると考えられます。

 

これまでの研究からは、睡眠不足によりビジランス(覚醒、vigilance)や反応時間の成績が低下することがわかっています。

 

ビジランスを調べる課題の典型的なものは下記のとおりです。

パソコン等のモニター上に画像を提示し、ある種の判断課題をおこなってもらいます。複数の同種の刺激の中に、異種の刺激が混じっているときにボタン押しをするというものです。要するに仲間はずれ探しなのですが、これがビジランス課題の一例になります。

 

疲れていたり、課題に慣れてきたりして、ビジランスが下がることによって見落としミスが増えていきます。眠気によっても成績が下がるため、睡眠の効果を調べるのに適した課題であると言えるのです。

 

このような課題で、難易度が同じものを用意すれば、睡眠時間が十分な場合と短い場合とで条件間の課題成績の比較を行うことができるわけです。

 

 

その5:実験実施とデータ取得

 

これで目的、方法、参加者、課題が決まったので、実験を行い、データを取得する段に進みます。

場合によりますが、少数の参加者をリクルートして予備実験を行い、うまくデータがとれるか、想定通りの結果が出そうかなどを調べることもあります。

事前に立てた予想がまったくの見当違いであれば、この時点で判明することがあります。

 

この実験方法で良さそうだ、となれば本実験に進みます。

参加同意書の取得、参加者への教示、倫理に配慮した実験の実施、データ取得をおこない実験終了です。その後データ解析の手続きに入ります。

 

その6:データ解析、検定

 

データを取得した後は、睡眠時間が十分なグループと不十分なグループとで成績に差があるのかを調べます。現在、定量的な研究においては、統計的に差があるかを検証することが求められます。

ここで用いられるのがいわゆる統計検定です。 実験計画では、どのような統計検定を行うかについてもあらかじめ想定して計画を立てます。

 

課題成績の比較を行う場合、異なる参加者グループの間の成績の比較であれば、t検定と呼ばれる方法が使われますし、同じ参加者に2つの条件に参加してもらった場合は対のあるt検定と呼ばれる方法が使われます。条件やグループが3つ以上であれば分散分析と呼ばれる方法が使われます。実験計画に応じた適切な検定を用いることが必要です。

 

ここまでやって、睡眠時間の長いグループの方が、睡眠時間の短いグループに比べて課題成績が良いという結果が出たら、所期の目的はめでたく達成された、ということになります。

 

もちろん、これはあくまで説明用の例に過ぎませんので、ご自身の課題に置き換えて研究計画を考えてみてください。