脳 Brain, No Life(仮)

とあるニューロベンチャー企業の研究員のつぶやきを記録するブログ

視力低下時に起きていること

つい先日、健康診断を受けてきました。

まだ正式な結果通知は届いていないのですが、その場でわかった視力検査の結果でショックを受けました。なんと、メガネをかけた状態の矯正視力にもかかわらず、左右の視力が0.3と0.4しかなかったのです。

 

実は新しいメガネを購入したのは、昨年の4月のことでした。以前使用していたメガネが数年間使い続けていたせいで度が合わなくなってしまい、自動車免許の更新も控えていたため、思い切って新調したのです。

 

そのときは1.0をやや超えるくらいの矯正視力になるよう、レンズをみつくろってもらったのですが、それがわずか1年で矯正視力0.3まで下がってしまったのですから、一体5年後10年後はどうなってしまっているのだろうと暗澹たる気持ちになってしまいました。

 

(なお、新しいメガネが出来たその日は、映像の鮮明さと、強烈な奥行き感でCGの世界の中にいるかのような不思議な感覚を味わいました。これはこれで、興味深い体験でした。ずっと度の合わないレンズをかけていたにもかかわらず、自分の脳の中に世の中を鮮明に、かつ、立体的に表現する能力が残っていたことを意味するわけですから、感覚器=目の部分を改善すれば、視覚野はまだきちんと働いてくれているという希望を持ってもよいのかもしれません。)

 

ところで、近視で視力が落ちてしまったとき、目にはいったいなにが起きているのでしょうか?

 

実は、近視の原因のひとつは眼球の奥行き(眼軸の長さ)が長くなってしまうことです。眼球が前後方向に長くなることによって、水晶体で曲げられた光が網膜の手前で像を結んでしまいます。結果、網膜上で像がぼやけてモノがよく見えなくなってしまうのです。このような近視を「軸性近視」と呼びます。

(軸性近視以外の近視には、水晶体や角膜の屈折力が高すぎるために、やはり像が網膜の手前で結ばれてしまう、「屈折性近視」などがあります)

 

以前、強度近視の患者さんの目の解剖写真を眼科系の解説記事で見たことがあるのですが、通常の人の目と比べて、一目瞭然に眼軸が長くなっているのが見て取れました。

 

通常の軸性近視の場合は、児童を対象とした調査において眼軸長の延びと視力低下の進行との間には相関のあることがすでに示されています(Saw et al. 2005)。

 

さて、眼軸はどのような状況で長くなるのでしょうか?

引き続き、それについて見て行きたいと思います。

 

 

【参考文献】

Saw, S. M., Chua, W. H., Gazzard, G., Koh, D., Tan, D. T. H., & Stone, R. A. (2005). Eye growth changes in myopic children in Singapore. British journal of ophthalmology, 89(11), 1489-1494.