脳 Brain, No Life(仮)

とあるニューロベンチャー企業の研究員のつぶやきを記録するブログ

視力低下を引き起こす要因(3)

視力関連エントリーの3回目です。

 

近視進行の根本的な原因として、網膜像がぼやけることで、眼軸長の延長が進行することが動物実験等を通してわかっています。

 

ヒヨコを対象とした実験では、目を半透明のレンズで覆い、網膜像をぼやかしてやると、眼軸長が伸びて近視になることが示されています。この分野での古典的な業績です。

 

その他、近視用のマイナスレンズを正常な目につけて、光の焦点を網膜の後ろにずらしてしまうことによっても、近視を引き起こすことが知られています。

焦点が網膜の後方にあるせいで網膜像がぼやけてしまっているのであれば、眼軸を伸ばしてやれば焦点が結ぶはずです。生体がこのような状況に適応しようとする結果、眼軸が伸びてしまい、近視が引き起こされるのです。

 

さて、ここで次のような疑問が生じます。もし網膜像がぼやけた状態が近視を悪化させてしまうなら、メガネ等で低矯正(under correction)をしてしまうと、網膜像がクリアでないために、近視を悪化させてしまう危険性があるのでしょうか?

実際、under correctionが近視を悪化させてしまう要因であることを示唆する研究結果もあります(小学校高学年から中学生くらいの年齢の参加者を対象とした調査結果ではありますが)。

 

私の視力が急に悪化してしまったのは、視力1を超えるくらいのゆるやかな矯正が問題だったかもしれないわけです。ひょっとしたら眼科医でぴったりの度数のレンズの処方箋を出してもらい、適切なメガネを購入していれば、視力の低下は防げた(あるいはもっと抑えられた)のかもしれません。この知識を活用できていればと悔やまれます。

 

(あるいはメガネの度が合っていないことの影響はさほどでもなく、単純に近くのモノばかり見ている生活の方が大きな影響がある可能性もあります。近視用に調整されたメガネをかけた状態で、顔からあまり距離のないパソコンの画面を一日中見続けるという生活習慣が目にいいはずはありません。対策として、遠くを見る用、近くを見る用の複数のメガネを用意して着用することや、遠近両用の二重焦点レンズのメガネを使うことが、目の健康を守るための選択肢になるのかもしれません。)

 

 

眼科学の世界でも、いろいろな議論がありますし(科学の世界では、大抵Aという主張があるとAでないという主張があるものなのです)、目を悪くする要因は多数あり、それらが複合して視力の低下を引き起こすため、諸要因と視力低下との間の因果関係は複雑ですが、目を悪くする要因は少しでも生活から減らしていけるようにしたいものですね。

 

 

【今回のテーマに関する評価】

実現度:生活次第

有用度:☆☆