脳 Brain, No Life(仮)

とあるニューロベンチャー企業の研究員のつぶやきを記録するブログ

ギリシャの債務不履行問題に思う(2)

ギリシャ債務不履行問題は、当初のショックから数日経ち、少なくとも現在のところまでは日本の株式市場に与える影響は軽微なものにとどまっているようですね。

 

また、スティグリッツなどの経済学者が、ギリシャによる緊縮財政策受け入れは問題解決につながらないとの見解を示しているようです。国民投票の行方も気になるところです。

 

 

 

ところで、政府の「総」債務残高対GDPで見ると、日本はギリシャを上回っており、「純」債務残高対GDP比でも日本はギリシャとほぼ同じ水準にあります。

 

これをもって「日本もデフォルトの危機に瀕している」という警告を発する人たちがユーロ危機の頃からいました。

 

しかしながら、ギリシャと日本の債務問題には大きな違いがあります。

 

ギリシャ欧州連合(EU)の共通通貨ユーロ建ての債務を負っており、日本は自国通貨(円)建ての債務を負っているという点です。

 

 

2002年、海外の格付け会社各社が、デフォルトを懸念して日本国債の格下げを行った際、財務省はそれら格付け会社に対して、

 

「日・米など先進国の自国通貨建て国債のデフォルトは考えられない。デフォルトとして如何なる事態を想定しているのか。」

 

という内容の意見書を提出しました。

(なおこのときの財務官は、現在の日銀総裁黒田東彦さんでした。)

 

日本国債は低利で安定的に取引されている上、日本国政府には徴税権もありますし、何より自国通貨の通貨発行権を持つのだから、債務不履行の懸念は当面考えられないという主張です。

 

また、国債は、対GDP比が発散しないようにコントロールできれば問題はない、という考え方があります。(では100倍、200倍でもいいのか、などという実際上の問題もありますが、それをひとまず置いておけば、)国債の発行が増えすぎないようにしておき、あとは名目GDPが順調に成長するようにして、純債務の対GDP比を小さい値に抑え、ロールオーバー(借り換え)が続くような環境を整えてやることが何よりも大事なのだと言えましょう。

 

なお、国の債務(国債)残高を減らすことが望ましいとしても、まったくゼロにするのは現実的ではないでしょう。

 

たとえばですが、日本銀行は、国債を裏付けとして通貨を発行しているのですから、国債がすべて完全に償還されてしまったら、何を裏付けとして通貨を流通させるのかを考えなければならなくなってしまいます。(アメリカでは、「幸運な90年代」に、順調に歳入が増え、国債が償還されていったため、実際にそのような議論がなされたことがあるそうです。)

 

少し脱線してしまいました。くり返しますが、日本にとって重要なのは、国債残高の対GDP比が小さくなるように、名目GDPが順調に伸びるような金融政策を継続すること、これに尽きるのではないでしょうか。