脳 Brain, No Life(仮)

とあるニューロベンチャー企業の研究員のつぶやきを記録するブログ

調査は自然な環境で実施すべきか?

「実験室のような人工的な環境ではなく、もっと普段どおりの日常的な環境でデータを取得できませんか?そうでないと、実際の製品使用環境(実際のCM視聴環境)での反応がわかりませんよね?」

 

脳機能計測を用いた製品評価やテレビCM評価などをしている際に依頼者のみなさまから頻繁にいただくご要望(あるいはご質問)です。

 

通常、脳波計測などをおこなうときには、雑音等が遮断された部屋で計測を行います。場合によっては体動がノイズにならないよう顎乗せ台と呼ばれる頭の動きを制限する機材を使うこともあります。また、画面をしっかり見るよう教示を受けた場合には、普段なら注意を払わないはずのCMもおのずと集中して視聴することになります。

 

普段テレビCMを見ているときの状況はどうでしょうか?

日常生活の中でCMを見る場合には、食事をしているかもしれませんし、周囲に家族がいるかもしれません。パソコンやタブレットを使いながらのながら視聴をしているかもしれません。テレビ画面には正対していない可能性もありますし、画面への距離もまちまちでしょう。

 

このように比べると、実験室での測定環境は、あまりにもかけ離れたものであると思えてくることもあるでしょう。「実験室で得られた知見を実際の環境下に適用して解釈してもいいのだろうか」そんな疑念にとらわれるのは無理もないのかもしれません。

 

しかし、よく考えてみれば、日常生活でやっているような「自然な」テレビ視聴の仕方は無数にありえることがわかります。

テレビの画面サイズ、音量、画面までの距離などの数量化できる調査パラメータの違いもあれば、ながら視聴もあれば、寝転びながらの視聴もあれば、といった視聴方法の違いもあります。この中で、どれが日常生活における「自然な」視聴方法と言えるのでしょうか?

 

調査参加者が各々、思い思いの方法で視聴をしてしまうと、脳反応の違いがCM作品の違いによるものなのか、視聴の仕方によるものなのか、区別がつかなくなってしまいます。

 

ですので、一見、不自然に思えるかもしれませんが、脳機能計測をおこなう際には、しっかりと計測条件を揃える必要があると考えられます。