脳 Brain, No Life(仮)

とあるニューロベンチャー企業の研究員のつぶやきを記録するブログ

なぜ血液型性格診断を信じてしまうのか?

血液型性格診断が科学的な妥当性を持たないことは、くり返し心理学者たちの研究によって明らかにされています。しかしながら、血液型性格診断を信じる人はまだまだたくさんいるようです。

 

なぜ、この科学の時代にあって、科学的な裏付けのない「迷信」が信じられてしまうのでしょうか?

 

血液型性格診断については、下記の2つの側面から考察する必要がありそうです。

 

1)血液型性格診断を実際に試みた人が、「自分のことを言い当てている!」と信じるのはなぜか?

 

2)根拠のない血液型性格診断を「正しい」と信じてしまう人がいるのはなぜか?

 

 

 

1)については、「バーナム効果」(フォアラー(Forer)効果)が知られています。

実は、血液型性格診断などの「占い」では、どんな人にとっても当てはまるような文章が使われているのです。たとえば次の文章は、バートラム・フォア(Bertram Forer)が自身の研究に用いたバーナム文(多くの人に当てはまる文)の例です。

 

「あなたは時として外交的で、愛想がよく、社交的であり、また時として内向的で、用心深く、内気になります。」

 

 

「あなたは自分自身に対して批判的な傾向があります」

 

血液型性格診断も、このような、誰にでも当てはまりやすい文章からできているのです。

 

実際に私自身、さる血液型性格診断の本を開いて、すべての血液型に関する質問項目をそれぞれ20問ずつ答えてみましたが、どの血液型でもおおよそ6〜7割くらい当てはまりました。

 

なんのことはない、誰にでも当てはまる文章なので、血液型性格診断をやってみるとなんだか自分の性格が当てられた気がする、というわけです。

このような効果をバーナム効果といいます。

 

2)については、少数事例から行う推論や帰納が迷信や思い込みの原因になっているものと考えられます。カツカレーを食べて試合に臨んだら、その試合に勝てたので、それ以降は試合の前と言えばカツカレーを食べる、といったような験担ぎや、風邪のときに行った民間療法が効いたと思い込んで、風邪をひくたびに特定の民間療法にハマってしまうことなどが事例として挙げられます。

 

血液型診断の場合、それらの診断が適合する少数のサンプルを頭に思い浮かべ、「やっぱり血液型診断は当たるのだ」と思い込んでしまうわけです。

 

一方、科学や医学の世界では、十分な数のサンプルを対象に、ある事象とその帰結との関連を調べ、統計的に「予防接種」と「流感への罹患率」の関係などを検証します。

 

少数事例からの帰納による思い込みを排除する知恵が科学の世界にはあるのです。

 

 

参考文献

菊池 聡 編著「不思議現象 なぜ信じるのかーこころの科学入門」北大路書房、1995年