脳 Brain, No Life(仮)

とあるニューロベンチャー企業の研究員のつぶやきを記録するブログ

心理学研究の再現性はどれくらい?

科学研究の持つ重要な性質のひとつは「再現性」であると言えましょう。

ニュートン力学に従い、地球は1年で太陽の周りを公転し、ハレー彗星は約76年周期で地球に接近します。これらは再現性の高い事実です。再現性の高さが科学研究への信頼性につながるわけですね。

 

では、我らが心理学研究の再現性はどのようなものなのでしょうか?

 

下記のNatureの記事「心理学の大規模再現性検証実験の初期結果」(First results from psychology’s largest reproducibility test)において、心理学研究の再現性が検討されています。

 

http://www.nature.com/news/first-results-from-psychology-s-largest-reproducibility-test-1.17433

 

心理学の著名な研究100本の再現性を調べてみたところ、39本の研究が再現されたそうです。再現されなかった61本の研究についても、24本はだいたい似たような結果が得られたとのことなので、おおよそ5割以上は再現されるといってもよさそうです。

 

「半分は再現されないの?」と思われた方もいらっしゃるかもしれません。

 

しかし、以前、ある種の生物系医学系の研究は7割が再現できないというニュースがあったことに鑑みると、かならずしも心理学研究の再現性が低いとは言い切れないと私は思います。

 

研究結果が再現されない理由のひとつとして(上記記事にも言及がありますが)再現実験でとられた方法が、もとの研究とまったく同じではないことが挙げられるでしょう。

 

たとえば、再現されなかったイスラエルで行われた個人間の和解(reconciliation)を促進させる要因に関する研究では、「産休」や「兵役」のため職場の同僚が仕事ができなかったというシナリオが用意されていましたが、アメリカで行われた再現研究では、その理由が「結婚式」や「新婚旅行」になっていたそうです。

 

このような違いが、研究参加者の判断に影響を与えてしまいかねないことは同意いただけることと思います。

 

また、調査参加者も異なる、実験者(研究実施者)も異なる、国も言葉も異なる、となれば実験結果の再現性に与える影響は非常に大きなものになりうるでしょう。

 

その他、実験を成功に導くための微妙なコツは、論文の「方法」(method)に明文化されていない可能性もあります。

 

このようなことが積み重なって研究結果の再現性が落ちてしまうのではないかと考えられるのです。