文芸作品を読むと他者の心を読む能力が(一時的に)高まる(2)
研究者たちは、WEB上のサービス(Amazon Mechanical Turk)を用いて調査参加者を集い、2ドルの参加料と引き換えに調査に参加してもらいました。
参加者たちは、文芸作品を読む、ノンフィクションを読む、の2つの条件にランダムに割り振られます。ちなみにノンフィクションはnonhumanな主題を扱った作品です。(論文全体では5つの実験を行っており、大衆小説を読む、何も読まない、という条件も調べられています。)
これらの作品を読んだ後、参加者たちは複数のテストを受けます。
そのうちの2つが、「認知的な心の理論(cognitive ToM)」を調べる課題と「感情的な心の理論(affective ToM)」を調べる課題です。ToMは心の理論(Theory of Mind)の頭文字を表します。
「認知的な心の理論」課題では、有名な「サリーとアンの課題」を修正した課題が使われています。
Vickiという名の登場人物がバイオリンを青い箱(blue box)に入れて、部屋を立ち去ります。すると別の人物が部屋に入ってきて、バイオリンを赤い箱(red box)に入れ替えてしまいます。部屋に戻ってきたVickiはバイオリンを出すためにどちらの箱を開けると考えられるか、その確率をパーセンテージで回答してもらいます。これを誤信念条件(false belief scenario)といいます。実際には、バイオリンはVickiがもともと入れた青い箱から移されてしまったわけですが、それを知らないVickiは「バイオリンは青い箱に入っている」という(物理的な状況からみると)「誤った信念」を抱いているため、このような条件名がついています。別のシナリオでは、Vickiがバイオリンを青い箱に入れて部屋を去った後、別の人物がやってきて青い箱と赤い箱の位置を入れ替えてしまいます(no false belief scenario)。この条件でも、Vickiがどちらの箱を開けると考えられるかの確率が問われます。
(3)に続きます