報酬系
おいしいものを食べたり、何かプレゼントをもらったり、報酬(reward)があたえられたときに活動する脳の一連の部位を「報酬系」と呼びます。
1950年代にラットの脳の報酬系を発見したのは、オールズとミルナーという2人の研究者でした。
オールズとミルナーは、ラットの脳に電極を刺して、ラットが特定の位置に来たら電流を流すという実験をしていました。するとラットは、電流が流されたときにいた場所に積極的に留まるようになりました。
これはラットが脳に電気を流されることを欲しているということではないかと考えたオールズとミルナーは、電極が脳のどの位置に刺さっていたのかを調べたのです。これにより、ラットの脳において報酬系と呼ばれる領域が発見されました。
さらにミルナーは、「脳内自己刺激」と呼ばれる手法を完成させます。
実験用の箱にラットを入れ、箱の中にあるレバーをラットが押すと、報酬系に電流が流れるという仕組みの装置を用意します。ラットが自ら脳に刺激を与えるため、このような名称がついています。
この装置にラットを入れると、エサを食べるのも忘れて夢中でレバーを押し続けます。報酬系への刺激に依存症状態になってしまっているわけです。
オールズとミルナーは、電極の刺入位置をいろいろと変えて実験をおこない、腹側被蓋野(ふくそくひがいや、VTA)と側坐核(そくざかく)を結ぶ神経線維(内側前脳束(ないそくぜんのうそく))に電流を流すのがもっとも効果的である(=ラットがもっとも頻繁にレバーを押す)ことを見出しました。
特殊なケースを除いて、ヒトの脳に直接電極を刺すことはできませんが、近年、fMRIやPETなどの非侵襲生体計測方法の出現により、ヒトの脳における報酬系の研究も大きく進展しています。