報酬系(10):買い物のときの脳活動(3)
参加者はスキャナーの中で仰向けに横たわっていますが、その前方にモニターがあり、そこに商品の写真や名前、価格などの情報が映し出されるシステムになっています。
まず、4秒間、商品の写真と名前がモニターに呈示されます。次の4秒間、その画面の下に価格の情報が表示されます(参加者の購買行動を促すために割安料金に設定されています)。さらに次の4秒間の間に、購入をするかどうかを「Yes」か「No」かでボタン押しにより回答します。
つまり、
0〜8秒間は、商品の好み(preference)について考える時間、
4〜8秒間は、価格との兼ね合いを考える時間帯、
8〜12秒間は、意思決定の時間帯
です。
この間の脳活動計測をおこない、購入を決めた場合と見送った場合で脳活動を比較したところ、つぎの事実がわかりました。
(腹側被蓋野の投射先である)側坐核(そくざかく、NAcc)は商品の好みを考えている時間帯と価格の呈示の時間帯に、購入を決めた場合で(購入を見送った場合と比較して)活動がより大きくなりました。
内側前頭前皮質(ないそくぜんとうぜんひしつ、MPFC)はやや遅れて商品の好みと購買の決定の際に、購入を決めた場合で活動がより大きくなりました。
島(とう、insula)は、価格の呈示と意思決定の際に、購入を「見送った」場合で活動がより大きくなりました。
側坐核と内側前頭前皮質は、報酬系の一部です。なので、その活動は、購入を決めた商品についての好みを表現していると解釈できます。つまり、購入を決めた商品はより好ましいことを表しています。
一方、島は身体的、精神的な痛みを表現する脳部位です。
本実験では実際に自分のお金を払うので、購入を見送った商品は「(自分にとっては)この商品は高すぎて出費するのは“痛い”」ことを表しています。
好みと値段を比較衡量して、商品購入の意思決定をおこなう神経メカニズムが、報酬系など関連する脳領域の活動の計測から明らかにされようとしています
Knutson, Brian, et al. "Neural predictors of purchases." Neuron 53.1 (2007): 147-156.