脳 Brain, No Life(仮)

とあるニューロベンチャー企業の研究員のつぶやきを記録するブログ

表情筋計測の使い道:デザイン研究への応用

これまでも何度か述べたとおり、脳波計測を含む生体計測(バイオメトリクス)を行うことの意義は、インタビューや質問紙調査などの言語報告では得られないデータを得られるところにあります。

 

クルマのデザインの研究に表情筋計測を応用した事例があります。

クルマのフロント部分をベビーフェイスにしたときに、それを見る人がどのような反応を示すかを、表情筋計測によって調べたのです。

 

赤ちゃんの顔の特徴は、顔が丸くて、目が大きく、しかも目が低い場所に位置しています。

 

実験では、フロントライトの大きさを大きくするなどして、通常のクルマをベビーフェイスに近づけています。

 

通常のクルマの画像を見ている際とベビーフェイスのクルマの画像を見ている際の表情筋の活動とを比較したところ、ベビーフェイスを見ているときの方が、「大頬骨筋」の活動が大きくなりました。

 

つまり、ベビーフェイスのクルマの画像を見ることで、頬が緩んだわけです。

 

情動・感情については「悲しいから泣く」のか「泣くから悲しい」のか、という議論が続けられてきましたが、ジェームズ=ランゲ説は、泣くから悲しいのだ、と主張しています。

 

ジェームズ=ランゲ説的な観点からは、

ベビーフェイスのクルマの画像を見る→大頬骨筋の筋電が発生する→頬が緩んでいる→ポジティブな気分になる

という一連の感情変化が生じる可能性があると考えられます。

 

消費者や利用者の感情に働きかけるデザインづくりに、表情筋計測は応用できるのかもしれません。

 

【参考文献】

Miesler, L., Leder, H., & Herrmann, A. (2011). Isn’t it cute: An evolutionary perspective of baby-schema effects in visual product designs. International Journal of Design, 5(3), 17-30.