脳 Brain, No Life(仮)

とあるニューロベンチャー企業の研究員のつぶやきを記録するブログ

赤ちゃんは「好き」?「見ていたい」?:後編

(昨日のつづきです)

 

 なお、何十年も以前の研究ですが、瞳孔測定学(pupillometry)を創始したHessによると、赤ちゃんの写真が提示されたときに、女性の瞳孔は大きく開き、赤ちゃんに対して強い興味を持っているが、男性は赤ちゃんの写真に対して瞳孔はさほど開かず、興味も薄いという結果が示されました。

 

 

それでは、likingとwantingの観点から、成人男女が赤ちゃんの写真を見たときに、それをかわいいと思うかどうか、見ていたいと思うかどうかには、性差はあるのでしょうか?

 

Kringelbachの研究チームは、71人の親ではない男女に赤ちゃんと成人の顔写真を見せて、意識的な評定(liking)と「どのくらいの時間赤ちゃんの顔を見ていたか」という行動的な反応(wanting)との間にどのような違いがあるかを検討しました。

 

女性は、男性に比べて、赤ちゃんの顔をより魅力的(attractive)と評価しました。つまり、女性は赤ちゃんの顔をより強く好んだのです。(一方、成人の顔への評価は男女間で統計的に有意な差はありませんでした。)

 

しかし、赤ちゃんの写真を眺めている時間には男女間で有意な差はありませんでした。女性の方が赤ちゃんを長く見つめるという傾向はなく、男女とも赤ちゃんの写真を見るのに同じくらいの時間を費やしたのです。

 

では、写真を眺めている時間に関連する要因はないのでしょうか?

 

研究では、赤ちゃんの顔の特徴(infantile feature)と魅力度と画像を見る時間の関係も調べています。顔全体の長さと幅、個々の顔の特徴(鼻の長さと幅、両目の長さと幅、口の大きさ、額の大きさ)や、個々の顔の部位の大きさと顔全体の大きさの比率を算出し、赤ちゃんらしさを定義しました。

 

これにより、Infantile featureと魅力度の関係、infantile featureと画像を眺めている時間の関係を調べたところ、男女とも赤ちゃんらしい顔の方を魅力度が高いと評価し、それを眺めている時間も長くなることがわかりました。

 

より赤ちゃんらしい特徴を持つことで、周囲の大人に見守ってもらえる可能性が高くなるというわけです。

 

 

参考文献:

Parsons, C. E., Young, K. S., Kumari, N., Stein, A., & Kringelbach, M. L. (2011). The motivational salience of infant faces is similar for men and women. PloS one, 6(5), e20632.