まばたきをしているときの脳
映画やドラマ、CMなどには場面の区切りをつけるためにカットが入ります。
一方、ヒトはまばたきをします。これはある意味、能動的に外界にカットを入れているようなものです。まばたきをしているときには、脳はどのような活動をしているのでしょうか?それを調べた研究をご紹介します。
実験参加者たちはコメディ・ドラマ「ミスター・ビーン」を視聴しました。参加者には番組を注意して観てもらうため、後でドラマに関する質問をしますと告げてから映像を視聴してもらいます。また、視線を計測していることも説明を受けますが、まばたきのタイミングを計測していることは伏せてあります。
まばたきをしているときには、右の前頭眼野(frontal eye field, FEF)や右の上頭頂小葉(superior parietal lobule, SPL)の活動が抑制されました。これらの領域は注意の維持に関与していることが知られています。
一方、まばたきをしているときにはデフォルト・モード・ネットワーク(DMN)に属する前部帯状皮質(anterior cingulate cortex, ACC)、後部帯状皮質(posterior cingulate cortex, PCC)、楔部(Cuneus)、角回(angular gyrus)などの活動が一過性に高まりました。
DMNは安静時などに活動が高まる脳内の機能的なネットワークです(構造的にもつながっています)。
なお、まばたきに見立てた、ブランク(intermittent blank)(5フレーム分、165msの黒い画面)に対しては、このようなDMNの活動の高まりは観察されませんでした。つまり、DMNの活動は、映像刺激が途切れることによるものではないと考えられます。
まばたきは、物語の切り替わりなど変化が起こるところで生じることが先行研究から知られているため、外界の事象に能動的に切れ目を与えるような役割があるものと解釈されています。
参考文献:
Nakano, T., Kato, M., Morito, Y., Itoi, S., & Kitazawa, S. (2013). Blink-related momentary activation of the default mode network while viewing videos. Proceedings of the National Academy of Sciences, 110(2), 702-706.