脳 Brain, No Life(仮)

とあるニューロベンチャー企業の研究員のつぶやきを記録するブログ

話すヒトのどこを見る?自閉症スペクトラムの人の視線の特徴

 

ブログを読んでいただいているみなさまへ

私が物理的にブログを更新できない可能性が出てきてしまったため、

本日、3日分のエントリーをアップロードしたいと思います。

 

「雨の日と月曜日はいつも憂鬱だ」とカレンも歌っていますが、

本ブログを読んで、週のはじまりに英気を養ってもらえたらと思います。

 

では第一弾を。追って2つのエントリーを更新いたします。

 

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「人の話を聞くときは、その人の目を見て聞きなさい」という教えを幼いころに受けた人も多いかもしれません。じっさい普段、私たちは人の話を聴くときには、話者の目元を見ます。

 

他者の意図を理解するのが困難な自閉症スペクトラムの成人と子どもはどうでしょうか?

 

視線追跡(アイトラッキング)の調査により、次のようなことがわかりました。

 

実験素材として、子供向けテレビ番組で、登場人物が1人、2人、3人、それ以上のシーン(約6秒)を12個つなげた77秒のビデオ・クリップを用意しました。それを、普通の成人と子ども、自閉症の成人と子どもの4グループの参加者に呈示します。

 

それぞれのグループが映像の同じところを見ていたか、好き勝手に別々の場所を見ていたかを定量化しました。

 

すると、ふつうの成人の大人、ふつうの子ども(定型発達の子ども)、自閉症の成人、自閉症の子どもの順に、見ているところが共通していることがわかりました。つまり、ふつうの大人になると、話者の顔を見るわけですが、自閉症の子どもになると、見る場所がバラバラになってしまうというわけです。

 

二人の登場人物が交互に発話をおこなう場面では、定型発達の成人と子どもが話者の顔(目や口元)を注視するのに対して、自閉症の大人や子どもは話者とは関係なく、画面上の人の顔や口元や手などを注視していることがわかりました。

 

 

これらの結果は、自閉症スペクトルの方の行動の特徴を定量化するだけに留まらず、コミュニケーション能力の改善を測るための指標にも応用される可能性があると考えられています。

 

 

参考文献:

Nakano, T., Tanaka, K., Endo, Y., Yamane, Y., Yamamoto, T., Nakano, Y., ... & Kitazawa, S. (2010). Atypical gaze patterns in children and adults with autism spectrum disorders dissociated from developmental changes in gaze behaviour. Proceedings of the Royal Society of London B: Biological Sciences, 277(1696), 2935-2943.