脳 Brain, No Life(仮)

とあるニューロベンチャー企業の研究員のつぶやきを記録するブログ

計算機社会科学に関する講演を聞いてきました(前編)

先日(10/29)、構造計画研究所主催のKKE Vision 2015に参加しました。

午前中に合原一幸先生の講演を、午後の鳥海不二夫先生の公演を聞く予定だったのですが、故あって、鳥海先生の講演しか聞けませんでした。

 

鳥海先生の講演タイトルは「計算社会科学へようこそ〜ビッグデータから社会シミュレーションへ」というもので、計算機社会科学(computational social science)の概要を紹介するものでした。

 

計算機社会科学には「データマイニング」と「シミュレーション」という2つの柱があります。

 

計算機社会科学における「データマイニング」は、日々膨大な情報を生み出し続けているソーシャルメディアを、コンピュータサイエンスの力を借りて、“ソーシャルセンサ”として利用し、網羅的にデータを取得し、客観的な事実の把握を行い、膨大なデータの中に埋もれていた新たな事実の発掘を行うというものです。

 

一方、「シミュレーション」とは、天気予報などの物理現象のシミュレーションにも利用されている方法論を、社会現象のシミュレーションに応用することを指します。ABテストが難しいような大規模な社会現象、現実社会では再現不可能な現象などにシミュレーションを応用して、現実社会の分析・理解、あるいは社会の想像・設計を意図するものです。

 

アブストラクトモデルと呼ばれる理論的なモデルを基盤として、エージェント・ベース・モデルによるシミュレーションを行い、どのような条件のもとで、どのような帰結が得られる可能性が高いかを分析します。

 

鳥海先生ご自身の研究として、どのような要件を兼ね備えたソーシャルメディアが成功するかを調べたシミュレーション結果が紹介されました。

 

結論だけ述べると、

ソーシャルメディアのコメント機能は、投稿者に対する報酬として働きます。コメントだけでなく、コメントへの返信がつけられるようになるとそれはメタ報酬として働きます。このようなメタ報酬もついているような社会システムにおいては、システムを持続的に存続させるような協調的な行動が誘発されるというのです。

実社会の具体例として、facebookが2015年7月に導入した個別のコメントに返信をつけられる機能を挙げていらっしゃいました。

 

興味のある方は、鳥海先生のご研究を調べてみてください。

 

参考文献:

鳥海不二夫, & 山本仁志. (2012). ソーシャルメディアにおける協調の進化. 情報処理学会論文誌, 53(11), 1234-1242.

(※情報処理学会の会員であれば入手可能だと思います)