脳 Brain, No Life(仮)

とあるニューロベンチャー企業の研究員のつぶやきを記録するブログ

政治的態度と幸福度:自己申告(self-report)による評価と外部から観察可能なbehavioral measureによる評価の違い

政治的にリベラルな人より保守的な人の方が幸福であることを示唆するこれまでの研究は、もっぱら自己申告による主観的幸福度のデータに依拠してきました。しかし、自己申告のデータには、回答者がどのくらい正直に申告してくれているかなど、さまざまな問題点があります。

 

Wojcik氏らの研究チームが大規模なサンプルを対象に調査を行ったところ、保守的な人は、自己の幸福度をより大きく報告する傾向のあることがわかりました。また、観察可能な行動(behavior)的指標から政治的態度と幸福度の関係について調べたところ、リベラルな人の方が、スピーチの中でよりポジティブなコトバを使い、笑顔が多いだけでなく、より純粋な笑顔(眼輪筋が動くデュシェンヌ・スマイル)を写真の中で浮かべていることが明らかになりました。

 

研究チームは、政治的な態度が両極端な人たちが集まる米国議会の議会報告から、議員がどのようなコトバを頻繁に用いているかを調べました。また、LinkedInのようなソーシャルメディアにおいて使われている個人の写真について、発言内容等から政治的嗜好を調べたうえで、どのくらい笑顔か、また眼輪筋も動いた真性の笑顔(デュシェンヌ・スマイル)であるかを調べました。これにより、外部から観察可能なmeasureを用いると、むしろ、リベラルな人の方が幸福であると示唆されたのです。

 

幸福度の自己申告データに関する研究の数は増えつつありますが、それらの研究においては、参加者の自己申告のスタイルが調査結果を歪めている可能性があるわけです。今後は表情解析を含めた(外部から観察可能な)行動指標により、幸福度の評価等を行う研究方法が重要性を増していくと考えられます。

 

参考文献:

Wojcik, S. P., Hovasapian, A., Graham, J., Motyl, M., & Ditto, P. H. (2015). Conservatives report, but liberals display, greater happiness. Science, 347(6227), 1243-1246.