自閉症の大人に最終提案ゲームをプレイしてもらうと・・・
昨日のエントリーでは、大学生を典型とした普通の参加者に最終提案ゲームをプレイしてもらうと、金額の分配について極端な不公平が生じないような、不平等回避的な結果になる割合が比較的高いという事実を紹介しました。
提案者は他者の感情を慮り、相手の機嫌を損ねないような、あるいは自分も相手も気持ちよく受け入れられるような比較的平等な提案をします。
応答者は、極端に不平等な提案がされれば気分を害します。そのときには提案者も巻き添えにして、お互いに獲得金額ゼロという結果を受け入れることを厭いません。
では、自閉症のヒトに最終提案ゲームをプレイしてもらうとどのような結果になるでしょうか?
自閉症の特徴は、他者の感情や意図の理解がうまくできないという点にあります。このような特徴を持つ参加者が最終提案ゲームをプレイすると、どのような行動をとるのでしょうか?
自閉症患者に10単位のマネーを分け合う最終提案ゲームをプレイしてもらった研究では、最初のゲームにおいて、大人の自閉症患者は25%近くが相手に対して0単位の提案をしました。(図を参照してください。灰色の棒グラフが大人の自閉症患者のデータ、白色の棒グラフが普通の大人のデータです)
0単位の提案は相手に拒絶されてしまいますから、合理的な戦略とは言えません。
やはり、自閉症患者(の中に)は、他者の気持ちを推察する能力が高くないために、自分が総取りをしようとする提案をしてしまう人が多いようです。(普通の大人だとそのような提案をする割合は5%程度)
一方で、自閉症の大人だと、5分5分の提案をする割合も60%に及びます。
非常に公平な提案をする自閉症患者もいるのです。
なお、普通の大人の参加者だと5分5分の提案をする割合は25%にとどまります。30%以上は「自分の取り分が6、相手の取り分が4」の提案をするのです。
普通の大人は、提案者側の立場にたつと、「相手よりちょっと自分にとって有利な分配額を提案しても、相手はそれを受け入れてくれるはずだ」と思いがちなのかもしれません。
参考文献:
Hill, E., & Sally, D. F. (2003). Dilemmas and bargains: autism, theory-of-mind, cooperation and fairness. Theory-of-Mind, Cooperation and Fairness.