不公平感の神経基盤(後編)
昨日のエントリーの続きです。
受け入れ率が低いとき、すなわち、拒否率が高いときは前島(ぜんとう、 anterior insula、島皮質前部)の活動が高まりました。島皮質の前部は、痛みの情報処理に関連していることが知られています。
また、提案を受け入れたときと提案を拒否したときを比べると、提案を拒否したときに島皮質前部の活動が高いことが判明しました。一方、背外側前頭前皮質(DLPFC)は、提案を受け入れたときも拒否したときも同じ程度の活動を示しました。
不公平な提案がなされたときには、島皮質前部(anterior insula)や前部帯状皮質(ACC)の活動が高まりました。
ACCは、脳のさまざまな領域から情報を受け取り、それらの領域の活動を調整します。今回の実験の場合、「不公平だから拒否しよう!」という不満を表明する島皮質前部と、「いや、1ドルでも多く報酬をもらっておこうよ!」という背外側前頭前皮質(DLPFC)からの情報を受け取り、これらの間の葛藤を調整するためにACCが活動したものと推察されます。
不満の方が大きくなれば、「1ドル、2ドルの金銭的報酬を捨ててでも、相手も巻き込んで、提案を拒否してやろう」という意思決定に傾くものと考えられるわけです。
参考文献:
Sanfey, Alan G., et al. "The neural basis of economic decision-making in the ultimatum game." Science 300.5626 (2003): 1755-1758.