脳 Brain, No Life(仮)

とあるニューロベンチャー企業の研究員のつぶやきを記録するブログ

幼児も人助けをする

ヒトは困っている他者に手をさしのべる「利他性」をもっています。

社会性の発達した一定年齢以上になると発揮される能力だとお考えの方もいらっしゃるかもしれません。

実際のところ、この性質は何歳ごろからあるのでしょうか?

 

WarnekenとTomaselloは、14〜18ヵ月の幼児を対象に、困っている他者を助けるかどうかを検証する心理実験を行いました。

 

実験参加者の幼児たちは、ごく短時間、実験者の大人と対面します。

その後、その実験者の大人が、何かをしようとするのですが、うまくいかない状況に直面します。状況は下記のとおりです。

 

 

紙のボール、マーカーペン、洗濯バサミ、帽子を落としてしまい手がとどかない(Out of reach条件)

 

雑誌の束を持っていて両手がふさがっているために、キャビネット(棚)のドアが開けられず雑誌を仕舞えない(Physical obstacle(物理的障害)条件)

 

本やクリップを重ねようとするが失敗してしまう(Wrong result条件)

 

モノを穴の空いた箱の落としてしまいモノを取り出そうとするが、箱の横にフラップ(垂れ下がった扉)があることに気づかない(Wrong means条件)

 

 

うまくいかない大人を見た幼児は、さっと近づき、落とした洗濯バサミを拾ったり、キャビネットの棚を開いてあげたりして手助けします。

家族でも、身近な知り合いでもない、赤の他人の大人を助けてくれるのです。

 

心の理論を有しているかを調べるためのサリー&アン課題に代表される誤信念課題に合格できるのは4, 5歳からと言われていますが、それ以前の2歳前の段階から、ヒトは利他性を発揮できることがこの実験からわかります。

 

この話を知って、性善説は正しいのかもしれないという感想を漏らしてくれた人もいました。

 

みなさんは、どう感じられますか?

 

 

参考文献:

Warneken, F., & Tomasello, M. (2006). Altruistic helping in human infants and young chimpanzees. science, 311(5765), 1301-1303.