脳 Brain, No Life(仮)

とあるニューロベンチャー企業の研究員のつぶやきを記録するブログ

訳語について(2)

これは、ultimatum gameについてだけに留まる話題ではありません。

 

囚人のジレンマはどうでしょうか?

 

先日、囚人のジレンマのゲームの利得表を紹介しましたが、それを再掲します。

 

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ゲームの表側にある2つのコトバ(「黙秘する」と「自白する」)は、プレイヤー1のとれる行動(action)を表します。表頭はプレイヤー2のとれる行動を表します。

 

囚人のジレンマ」ゲームの状況を物語的に理解するために与えられるストーリーは下記のとおりです。

 

プレイヤー1と2は、とある犯罪(強盗、窃盗、・・・)の共犯者で、ふたりとも警察に捕まってしまい、別々に取り調べを受けています。

2人とも、黙秘を続けられれば、証拠不十分でごく短期間の勾留で済むため、お互いに3ずつの利得を得ます(プレイヤー1も2も「黙秘する」を選んだ結果(outcome)に対する満足度を利得関数によって数値化すると、「3」という利得に換算されます)。

 

片方が黙秘をしているのに、もう片方が自白をすると、黙秘を続けたプレイヤーは思い罰を受け、自白をした方は捜査に協力をしたことで無罪放免となります。このとき、黙秘をしたプレイヤーは1の利得を、自白したプレイヤーは4の利得を得ます。(取り調べを行う刑事は、その条件を知らせて、容疑者たちに自白するよう揺さぶりをかけるわけですね)

 

両方が自白をすると、両方共、懲役刑を受けてしまいます。片方が自白をして、片方が黙秘を貫いた場合の、黙秘した側の受ける刑よりは軽い刑になるので、両者が得る利得は(このゲームの例では)「1」です。

 

 

さて、囚人のジレンマの「黙秘する」を「協調する/協力する(Cooperation, C)」、「自白する」を「裏切る(Defection, D)」としているゲームの利得表もありますが、これは実験の際に使うことはおすすめできません。

 

ゲームの参加者が「こっちの戦略は裏切りなんだな。じゃあ、相手を裏切る薄情な人間だとは思われたくないから、協調することにしよう」と考えてしまうなどの影響が出てしまう可能性があるからです。

 

なので、実験で囚人のジレンマをプレイしてもらう場合には「戦略C」「戦略D」という表現にとどめておくか、CやDがCooperationやDefectionを連想させる可能性があるなら、「戦略A」「戦略B」とすべきでしょう。