「モノより思い出」
「モノより思い出」。1999年からつづく日産セレナのCMのキャッチコピーです。モノを買うより、たくさんの経験をして心豊かになろうというメッセージですね。ただ思い出づくりのお出かけのためにはクルマを買わなければならないわけですが(笑)
さて、モノ(テレビやコンピュータなど)を買うのと経験(旅行など)を買うのではどちらが消費者の幸福度を高めるのでしょうか?
Van BovenとGilovichがこの問題に取組みました。
97人の大学生を対象に、チョコレートバーのごほうびと引き換えに、「暮らしの中での幸せと楽しみを促進することを意図しておこなった消費」に関する質問紙調査に参加してもらいました。
具体的には100ドル以上の支出をした最近の「経験消費experiential purchases」と「物質消費material purchases」について、下記の4つの質問をおこない、9段階で評価をしてもらいました。(どの回答者がどちらの消費条件について回答するかは、ランダムに割り振られました)
「その消費について考えるとき、あなたはどれくらい幸せになるか?」
“When you think about this purchase, how happy does it make you?”
1:幸せでない、5:中くらい、9:非常に幸せ
「その消費はあなたの生活の中の幸福感にどれくらい貢献したか?」
“How much does this purchase contribute to your happiness in life?”
1:まったくしない、5:中くらい、9:とても
「その消費はお金の使い方としてどのくらい良かったと思うか?」
“To what extent would you say this purchase is money well-spent?”
1:いい使い方ではなかった、5:なかなか良い使い方だった、9:とても良い使い方だった
「その消費にかけたお金をあなたをかつてよりハッピーにしたタイプの別の何かに費やした方がよかったとどれくらい思うか?」
“To what extent do you think the money spent on this purchase would have been better spent on something else—some other type of purchase that would have made you happier?"
1:まったくない、5:中くらい、9:とても
結果は下記のグラフのとおりです。
この結果をみると、経験消費(Experimental purchases)の方が、幸福感を高め、他のものに支出しておけばよかったという思いも少ない(≒後悔も少ない?)ようです。
なお、先の97人の学生とは別に、(キャンディー・バーと引き換えに調査に参加した別の)47人のアウトサイダーが経験消費と物質消費の記述を読み比べて、どちらがより幸福だと思うかを評価した値が表の1番下の数字です。
経験消費の方が高い数値が出ています。傍から見ても、経験消費の方が幸福感を高めると思われるようです。
ある程度の額の支出を行うとき、より幸せ度を高めたい場合は、「モノより思い出」を念頭に購買行動をおこなうと良さそうです。
参考文献:
Van Boven, L., & Gilovich, T. (2003). To do or to have? That is the question. Journal of personality and social psychology, 85(6), 1193.