海馬の歯状回の機能低下が、加齢にともなう記憶力低下の原因&カカオの成分が改善をサポート(1)
加齢にともなう記憶力の低下は、海馬体(かいばたい)の中の歯状回(しじょうかい)の機能低下に関連するのではないかと考えられてきましたが、これには因果的な証拠が必要とされます。
それには、歯状回の活動低下が記憶機能低下と関連することを示すか、歯状回の機能を高めることで健康な高齢者の記憶機能が改善されるかを示さねばなりません。
研究者らは、高解像度のfMRI手法を用いることによって、歯状回の活動を的確に捉えることに成功しました。また、歯状回の活動を引き起こすような認知課題の作成をおこないました。これにより、上記の問題にアプローチすることが可能となったのです。
実験には50〜69歳の健康な高齢者が参加しました。
彼らは、ココアが高含有あるいは低含有の食事を3ヵ月間にわたって摂取しました。
結果、ココア由来のフラバノール(注)をたくさん摂取したグループでは歯状回の機能が改善し、認知機能も高まることが示されました。
この研究では、歯状回の血流量が年齢が高くなると減少すること、前臨床段階の(=個人が自覚する前の?)アルツハイマー病の参加者の血流量はコントロール群に比べると低いこと、が示されました。
また、研究者らが本研究で用いた認知課題がModified-Benton (ModBent)課題という課題なのですが、加齢にともない成績が低下する(=反応時間が長くなる)ことが知られています。
研究者らが調べた結果、歯状回の血流量の低下とModBent課題の反応時間の増加(=成績の低下)の関係が明らかになりました。
参加者には、カカオの成分であるフラバノールを与えます。
高フラバノール群は、450mgのフラバノールを1日2錠、900mg摂取します。
低フラバノール群は、45mgのフラバノールを1日2回に分けて摂取します(一日あたり45mg)。
これを12週続けます。
すると、高フラバノール群は歯状回の血流量が改善し、またそれにともない課題の反応時間が早くなりました。
加齢にともなう認知機能の低下は歯状回の機能低下によるものであることが示され、また、カカオ由来のフラバノールによって、これが改善されることが明らかになったのでした。
注:フラバノールには、健康効果として「動脈の柔軟性を保ち、小血管の血液循環を増加させる効果」が指摘されているそうです。
参考URL
https://ja.wikipedia.org/wiki/フラバン-3-オール
また、上記wikiの記事にもとづくと、苦味成分を取り除いていないチョコレートでないと、健康増進効果は期待できない可能性があります。
参考文献:
Brickman, A. M., Khan, U. A., Provenzano, F. A., Yeung, L. K., Suzuki, W., Schroeter, H., ... & Small, S. A. (2014). Enhancing dentate gyrus function with dietary flavanols improves cognition in older adults. Nature neuroscience, 17(12), 1798-1803.