脳 Brain, No Life(仮)

とあるニューロベンチャー企業の研究員のつぶやきを記録するブログ

中程度の瞑想の修行を積むと、瞑想中に海馬が活動するようになる(3)

 

実験の結果です。

 

結果:

中程度に経験のある瞑想者の瞑想中(無言のマントラ瞑想中)に、もっとも統計的に有意な活動が見られたのは、右の海馬でした。その他の部位として、両側の中帯状回、両側の中心前回、そして右の楔前部が活動しました。

 

ワード条件では、両側の上側頭回と左の上前頭回の活動が見られました。

 

f:id:Takayasu_Sekine:20160126101633p:plain

無言のマントラ瞑想のときに活動が見られた領域

 

上の2つのパネル:右の脳

下の2つのパネル:左の脳

 

P: posterior(後部)

A: anterior(前部)

L: left(左)

R: right(右)

 

左右の海馬・海馬傍回が活動していました。

 

 

ディスカッション:

 

海馬の活動の上昇がどのような意味を持つかは明らかではないが、記憶の向上と結び付けられる可能性があります。

先行研究で、瞑想により海馬の活動が高まり、視覚的な記憶が高まったことが報告されています。

また、瞑想によりワーキング・メモリの容量が高まったことを示唆する研究もありますが、ワーキング・メモリは前頭前皮質、頭頂皮質、および帯状皮質の活動に起因すると考えられているので、ワーキング・メモリにおける海馬の役割は明確ではありません。

 

 

瞑想と海馬の活動の関連性は示されたので、もう一歩踏み込んで、瞑想が記憶を高める効果があるかについてはさらなる研究が必要であるといえるでしょう。

 

 

 

(なお本研究では、瞑想の修行をまったくしていない人が参加していないので、そのようなまったくの素人にマントラを心のなかで唱えさせた場合も海馬が働くようになるのかという点は、気になるところです。)

 

参考文献:

Engström, M., Pihlsgård, J., Lundberg, P., & Söderfeldt, B. (2010). Functional magnetic resonance imaging of hippocampal activation during silent mantra meditation. The Journal of Alternative and Complementary Medicine, 16(12), 1253-1258.