脳 Brain, No Life(仮)

とあるニューロベンチャー企業の研究員のつぶやきを記録するブログ

Fmθの発見

 

Fmθ(えふえむしーた)として知られている、前頭正中部から取得されるシータ帯域活動の発見者は、石原務先生です。石原先生は1970年代からFmθという名称を使っていらっしゃるそうです。なので、発見から40年くらいは経っている、今や代表的な脳波測度のひとつです。

 

内田クレペリン検査の連続加算作業中の脳波を調べたところ半数以上の被験者から、前頭部シータが記録されたそうです。データを精査したところ、作業が順調なときに出現が認められたとのこと。作業が順調なときに現れ、参加者の半数以上から取得されることから、これは正常な脳活動であろうと石原先生は考えます。あわせて、当時、異常脳波だと考えられていた非作業時の前頭部シータも、出現部位、周波数帯、振幅の大きさが同じだったことから、正常脳波であろうと判断されたそうです。

 

日本の学会ではなかなか認められず、開眼作業中の脳波だから、眼球運動や眼瞼振戦にともなうartifactではないか?などの疑義が呈されたようです。

海外の学会で発表した際も、emotionではないか、眼瞼振戦だろう、などの反論が寄せられますが、最終的にシータ波研究者のNaquetらの支持もあり、Fmθは徐々に認められていきます。

 

石原先生は、Fmθを誘発しやすい課題として「単純構造、単一思考、適当な難易度、例えば、内田クレペリン検査、3の累乗暗算、都道府県名を幹事で想起する(北から南へ)などで、最も誘発率が高いのは、TVゲームのテトリス」だったそうです。

 

くり返しくり返し複数の条件で観察される、つまり再現されることで、ある現象が科学の世界で認められていくのですね。

 

参考文献

石原務. (2001). Fmθ—学会で認められるまでと今後について—. 日本神経回路学会誌, 8(4), 153-154.