心理学や脳科学をどう活かす?(1)
ひと頃の脳科学ブームも一段落、という雰囲気が漂う今日この頃ですが、心理学や脳科学の知見を活用して自分の生活や仕事に活かしたい、というニーズはむしろじわじわと増えつつある、という実感が私にはあります。
たとえば、心理学や脳科学の方法にもとづいて商品開発リサーチやマーケティング・リサーチを行いたい、という希望を抱いている企業の担当者は数多くいます。
より良い商品やサービスをつくり、社会に提供したい、というのは多くの企業人の目標とするところだからです。
ものづくりの世界では、単純に製品のスペックを上げることが、消費者の満足感の向上につながらないことが多くなってきました。ユーザーの満足度を上げるための機能の改良や性能の向上競争は頭打ちになってきており、別方面からの付加価値づけが必要であると考えられます。製品開発にあたっては、製品の体験がもたらす情緒的・感性的な価値を高めていくことの重要性が認識され、その実現に向けた努力が積み重ねられています。
そして、そのような目標の実現のためには、ヒトの感性を研究対象としてきた心理学や脳科学の視点が欠かせません。
また、マーケティング・リサーチの分野でも、質問紙調査やインタビュー調査など、調査参加者の意識的な言語報告に頼る従来の調査手法の問題点や限界に気づいたマーケター担当者たちが、あらたな調査手法を模索するなかで、心理学・脳科学への期待が大きな盛り上がりを見せてきています。
一般に、ヒトは自分が感じていること、思っていることをすべて認識したり、言語化することはできません。ある体験をとても良いものだと感じても、その本当の理由を説明できないことがあるのです。
そこに科学のメスを入れるためには、心理学や脳科学の方法や考え方が有用になるケースが数多くあると言えます。
いま私たちは、「脳科学」の熱狂的なブームが去った後に、より成熟した文化として心理学や脳科学の実社会への応用というテーマが根付きつつある、そんなフェーズに足を踏み入れつつあるのかもしれません。
このような社会的背景やニーズを念頭に置き、心理学や脳科学をいかに活用すべきかについて考えていこうと思います。
【今回のテーマに関する評価】
実現度:(評価なし)
有用度:(評価なし)