脳 Brain, No Life(仮)

とあるニューロベンチャー企業の研究員のつぶやきを記録するブログ

2015-08-01から1ヶ月間の記事一覧

視線計測:やはり測ってみることに意義がある

視線計測の調査結果をいくつかご紹介してきましたが、記事を読まれた方の中には、「そんなこと当たり前じゃないか。わざわざ視線計測をするまでもないのでは」と思われた方もいらっしゃるかもしれません。 Webページやポスターに人物が登場していれば、自然…

ポスター中の人物の目線を利用して、商品に視線を向けてもらうには

以前のエントリーで、webページ上の人物・キャラクターの目線を利用して、閲覧者に視線や注意を向けてもらいたい箇所に、視線を向けてもらうための方法を紹介しました。 http://neuroscience.hatenablog.jp/entries/2015/08/26 まったく同様の方法を用いて、…

行動喚起の邪魔になる要因がwebページにあると・・・

会社のwebページに、問合せ用の電話番号を載せているのに、電話がかかってきた試しがない。そんなお悩みはありませんか? Webページの目的は、訪問者に商品やサービスの「問合せ」をしてもらう、実際に「購入」してもらうなど、行動喚起を引き起こすことにあ…

「興味」と「好み」の違いを瞳孔径の反応から調べる

ヘスによる古典的な研究では、瞳孔径は「興味」のあるモノに対しては広がり、興味のないものに対しては狭まるとされています。 その後、瞳孔径については数多くの研究が行われ、画像の明るさや色合いなど様々な要因が瞳孔径の変動に影響をおよぼすことが知ら…

ヒトは視線を無視できない:webページ上で閲覧者の視線を誘導する

ヒトは他人の視線・目線を無視することはできません。 誰かが何かを見ていれば気になりますし、人の顔を見るときには、目元を見るのがふつうでしょう。 この原則は、webページでも成り立ちます。 ページ上に人の顔があれば、閲覧者の視線はそちらに向きます…

webページ上での視線の動き

脳波計測を含む、広い概念としてバイオメトリクス(生体計測)という言葉が使われることがありますが、視線計測も大きな武器のひとつです。 普段、我々は視線がどのような動きをしているのかについては自覚的ではありません。 たとえば、ヒトの顔を見てみて…

ストレス指標としての唾液アミラーゼ

現代社会にはさまざまなストレスがあふれています。 長時間労働やIT化にともなうテクノストレスなど、サラリーマンは多くのストレスを抱えています。低年齢化する受験競争のため、子どもたちにとってもストレスは日常的な問題になっています。 ストレスの簡…

運転中のストレスを測るには

クルマの運転を続けていると、疲労が溜まりますし、眠気も生じます。ストレスも溜まるでしょう。 運転中の眠気は、脳波のアルファ帯域パワーの大きさと関連があることは以前のエントリーで触れました。 ストレスや疲労と関係のある生理指標としては、唾液ア…

運転中の脳波

前エントリーで触れた研究では、実際の道路を運転中の脳波を計測していました。 しかし、脳波計は正直かさばりますし、計測器を装着した状態での運転には危険がともないます。そのようなリスクを勘案すると、実車で実際の道路を走っている際の脳活動を調べる…

運転中の眠気を評価する

現在Googleが自動運転の実証研究を続けていることは周知の事実です。 しかも、自動運転は非常に正確で事故もほとんど起こすことがないそうです。 このような近未来の技術による自動運転の実現までは、私たち人間がクルマの運転についてはすべての責任を負う…

書字スリップ

ちょっとした実験をしてみたいと思います。 できれば先入観なく課題に取り組んでいただきたいので、なるべく先は読まないようにして、まずは、ペンと紙を用意してください。 準備ができたら、心の中でひらがなを1つ決めて(「あ」「お」「す」「ぬ」…などが…

人間の脳が培養されたそうです

気になるニュースが出ていましたね。 ほぼ完全な人間の脳、実験室で培養成功 米大学研究 http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20150820-00000010-jij_afp-sctch 報道によれば、オハイオ州立大学のRene Anandさんらの研究チームが、大人の皮膚細胞を万能細胞化…

割引率は一定か?

割引率、割引因子を考えるときは、計算の都合上、一定の率で割り引くことが多くあります。1年後の利得を割り引くために割引率5%で1.05で割るなら、2年後の利得を割り引くには1.05の2乗で割り引くといった具合です。 離散的に割り引くのではなく、連続的に割…

朝四暮三を選んだサルは非合理的?:追記

前回のエントリーについて少々追記をしたいと思います。 追記1 「朝三暮四」については、別の角度から分析することも可能です。朝に多くもらっておけば行動の選択肢を広げることができます。朝に4つもらっておけば、3つでは足りなかったときに、もう1つ…

朝四暮三を選んだサルは非合理的?

朝三暮四の故事を現在割引の考えにもとづいて再考してみたいと思います。 春秋戦国時代の宋、サル好きの狙公が、家計が苦しくなってしまったため、飼っていたサルに食事の減量を相談した。「エサのドングリを朝に3つ、暮に4つではどうか?」と問うと、サル…

割引率、割引因子の考えをどう応用するか?

割引率はふつう、正の値をとります。 ヒトは遠い未来より現在を重視しやすい生き物なのです。 たとえば、体に悪いことは承知していても、暴飲暴食や喫煙をやめられないというヒトは多いのではないでしょうか? こんなに飲んでばかりいたら、将来は肝炎、肝硬…

未来の利得をどう割り引くか

みなさんは、未来の利得(たとえば金銭収入)をどのくらい重視するでしょうか? 抽象的な問いですが、これを数量的に表すためのひとつの方法があります。 割引率(あるいはそれと裏表の関係にある割引因子)を求めることで、その人がどれくらい未来の利得を…

報酬系(11):報酬系は文化的なモノによっても活動する

元来、報酬系は、食料や飲料などを摂取する際に活動し、それらの摂取を強化する働きを担っています。つまり、生命の維持に重要なモノ、個体に喜びをもたらしてくれるモノへの接近動機を高めることに役立っています。 しかし、人間の嗜好は文明の発展とともに…

シャドーパーソンの正体は?

部屋には自分ひとりしかいないはずなのに、自分の背後に誰か人がいるような気配を感じたことはありませんか? それはシャドーパーソンかもしれません。 昨日のエントリーに引き続きBlankeらのグループの研究です。 左の角回を刺激することにより、自分のすぐ…

体外離脱体験は脳への刺激で起こせるか?

病院で手術を受けていたら、いつの間にか自分が手術台の上に横たわっている自分の体から抜けだして、天井から手術の様子を眺めていた。さらには病院の壁をすり抜けて、上空から病院や街を見下ろしていた。 幽体離脱の典型的な体験談です。 心霊体験に属する…

平均への回帰

お盆休みですね。 小中学校から高校大学まで、学校は夏休みまっただ中でしょうか。 スポーツ系の部活動は、炎天下の中、活発に活動をおこなっていることと思います。 スポーツや音楽など様々な技能を伸ばすために、指導者は厳しく叱って指導した方がいいので…

舌端現象:思い出せなくてもどかしい

「あの人の名前が思い出せない。喉元まで出かかっているのに!」ともどかしい思いをされたことのある方は多いと思います。 このように思い出せそうで思い出せない現象には、舌端(ぜったん、Tip of the tongue, TOT)現象という名前がついています。日本語で…

報酬系(10):買い物のときの脳活動(3)

参加者はスキャナーの中で仰向けに横たわっていますが、その前方にモニターがあり、そこに商品の写真や名前、価格などの情報が映し出されるシステムになっています。 まず、4秒間、商品の写真と名前がモニターに呈示されます。次の4秒間、その画面の下に価格…

報酬系(10):買い物のときの脳活動(2)

Knutsonらは、MRIスキャナーの中で、参加者に買い物をしてもらい、その際の脳活動を計測する実験をおこないました。 消費者はあらかじめ調査参加費(1時間あたり20ドル)と買い物のための費用として別途20ドルを渡されます。 参加者は、実験中に呈示された商…

報酬系(10):買い物のときの脳活動(1)

日々の経済活動は、私たちの暮らしと切っても切り離すことのできないものです。あるいは現代人にとっては生活の中心をなすものといっても過言ではないかもしれません。 経済活動の中心になるのは仕事と買い物です。つまり、「労働の提供」により対価である賃…

報酬系(9)

前のエントリーでは、wantingとlikingが異なること、従来から報酬系と呼ばれていたシステムはwantingに関連していると考えられることについて述べました。 Wantingとlikingの違いについて人間の観点から考えてみましょう。 重度の向精神薬中毒患者は、向精神…

報酬系(8) wantingとliking

先のエントリーで、レバーを押すことで、脳内の報酬系に電流が流れるようなシステムを構築すると(すなわち、脳内自己刺激でドーパミンニューロンの活動を引き起こせるようになると)、ラットは食事も忘れてレバー押しに熱中してしまうという研究を紹介しま…

報酬系(7) ドーパミンニューロンが活動するタイミング

ドーパミンニューロンの活動は、報酬そのもの(つまり「快」そのもの)ではなく、報酬予測(reward prediction)や報酬の予測誤差を表現しているという議論があります。 報酬を与えられ方とドーパミンニューロンの活動には次のような関係性があることがわか…

報酬系(6) 視線が合うとドーパミンが出る

雑踏の街角や、電車の中で見知らぬヒトと目が合って、ビビッと脳が反応するのを感じた経験のある人は多いと思います。視線が合うこと、すなわちアイコンタクトは生物にとって非常に大きなインパクトをもっています。アイコンタクトは、敵か味方か、近づくべ…

報酬系(5) マーケティング行動は味の好みや報酬系の活動にも影響を与える

高級なワインと安物のワインを飲み比べる機会があったとしたら、あなたはいずれのワインの味を好むでしょうか? ワインの質による?そうですね、その通りです。 けれども実はワインの質は変わらず、値段だけが違うとしたら・・・? そんな実験がすでに行われ…