脳 Brain, No Life(仮)

とあるニューロベンチャー企業の研究員のつぶやきを記録するブログ

2015-10-01から1ヶ月間の記事一覧

計算機社会科学に関する講演を聞いてきました(前編)

先日(10/29)、構造計画研究所主催のKKE Vision 2015に参加しました。 午前中に合原一幸先生の講演を、午後の鳥海不二夫先生の公演を聞く予定だったのですが、故あって、鳥海先生の講演しか聞けませんでした。 鳥海先生の講演タイトルは「計算社会科学へよう…

道徳的判断と脳:感情の果たす役割

Greeneらは、トロッコジレンマと歩道橋ジレンマにおける受け入れ判断の可否の違いを脳の感情的な反応の違いから説明しました。 彼らは、道徳的ジレンマには2種類あるといいます。moral-personal dilemmasとmoral-impersonal dilemmasです。 典型的なmoral-p…

道徳的判断:トロッコ問題と歩道橋問題

突然ですが、サンデル教授の「白熱教室」でも話題になったトロッコ問題(trolley problem)です。それぞれの文章を読んで、yesかnoか考えてみてください。 トロッコジレンマ:暴走したトロッコが線路上を走っており、このままでは5人の作業員を轢き殺してしま…

もっとわかりやすく抽象的に

工学部の先生がとある工学上の問題を数学者の先生に相談したときのこと、 数学者の先生が「あなたの話は具体的でわかりにくい。もっとわかりやすく抽象的に説明してくれませんか?」と言ったというエピソード。 工学者と数学者の思考における嗜好の違いが垣…

見つめ合いが飼い主とイヌの絆を強める

オキシトシンは親子の絆(愛情、愛着)や他者への信頼に関わるホルモンです。 麻布大学の研究グループは、ヒトとイヌとの異種間交流の中で、 オキシトシン分泌の増加が見られるかを検証しました。 飼い主とイヌを交流させたところ、 飼い主と見つめあう時間…

短時間のマインドフルネス瞑想で他者への共感が高まる

瞑想に関する研究が進み、さまざまな効用が明らかにされていきました。 72人の参加者が5分間のマインドフルネス瞑想群とコントロール群にランダムに割り付けられました。 マインドフルネス瞑想群は、コントロール群と比較して、MAAS-S(Mindful Attention Aw…

かわいいものを見ると、ギュッとしたくなる

かわいい動物や赤ちゃん、ぬいぐるみなどを見ると、ギュッとしたくなる衝動にかられます。かわいいものを見ると、ちょっとした攻撃を加えたくなるようなものですね。 DyerとAragonは、90人の実験参加者に、梱包に使われる気泡緩衝材(bubble wrap)(いわゆ…

創造性は左右の脳どちらと関連する?(脳波研究)

右脳と左脳が異なる機能を担っているとする研究は数多くあります。 代表的なものは言語機能で、言語中枢は左の脳にあると考えられています。 脳の特定の領域(ブローカ野)を損傷すると、言葉がうまくしゃべれなくなりますし、また脳の別の領域(ウェルニッ…

デフォルトモードネットワーク(DMN)と創造性

創造的なヒトとそうでないヒトにはどのような違いがあるのでしょうか? 一般的な創造性については定義することも測ることも大変な困難を伴うため、心理学や脳科学では実験用の創造性課題を用いて研究をおこないます。Alternative use課題(別用途考案課題)…

子どもの脳もブランドに反応する

ファストフードやおかしなど、世の中には子どもたちに人気の食べ物がたくさんあふれています。各社はCMなどブランド戦略を練り、いかにして子どもたちに自社製品・自社ブランドの美味しさや楽しさをアピールするかに心を砕いています。 さて、ブランドは子ど…

呼吸法や瞑想は、注意力を高め、ストレスを低減させる

呼吸法や瞑想法は、精神を安定させ、集中力を高めるため、多くの宗教などで修行に取り入れられてきました。近年では、精神療法や日常のストレス管理などに活用されはじめています。 ポズナーと中国人グループの研究により、呼吸法や瞑想を合わせて行うIntegr…

運動により認知課題の成績がアップする

日常的に運動をする多くの人は、健康増進やレクリエーション・気分転換のためにしているのではないかと思います。 運動をすると、頭がすっきりしたり気分がよくなったりするのを実感しますが、認知的なパフォーマンスに影響をおよぼすことはあるのでしょうか…

話すヒトのどこを見る?自閉症スペクトラムの人の視線の特徴

ブログを読んでいただいているみなさまへ 私が物理的にブログを更新できない可能性が出てきてしまったため、 本日、3日分のエントリーをアップロードしたいと思います。 「雨の日と月曜日はいつも憂鬱だ」とカレンも歌っていますが、 本ブログを読んで、週…

まばたきをしているときの脳

映画やドラマ、CMなどには場面の区切りをつけるためにカットが入ります。 一方、ヒトはまばたきをします。これはある意味、能動的に外界にカットを入れているようなものです。まばたきをしているときには、脳はどのような活動をしているのでしょうか?それを…

コサイン類似度(つづき)

一昨日紹介したコサイン類似度ですが、文書・文章の類似度の評価に使われていることも併せて説明しました。 ちょっと気になって、Googleで、文書・文章にnotをかけてコサイン類似度について検索したところ、文章の類似度に関係のない文脈では、コサイン類似…

Psychtoolbox(PTB)が動くOctaveとPTBのバージョンの組み合わせ

ちょっと故あって、心理実験用プログラミングの環境を整える必要があり、Psychtoolbox(PTB)のインストールをしました。 私が使っているPCのオペレーションシステムのバージョンに合った、OctaveとPsychtoolboxをインストールする必要があり、かなりの時間を…

類似度

ちょっと故あって、2つのベクトル間の類似度や相関係数にあたるmeasureで、値が0から1までの間をとるようなものを探しています。 相関係数だと、−1から+1までの範囲をとるので、目的に適いません。 (相関係数も無理やり0から1の値に変換することはできそ…

御礼

このブログを続けていてはじめて1日あたりのアクセス数が100を超えました。 閲覧していただいているみなさま、どうもありがとうございます。

アルコールを飲むと前頭葉の抑制機能が働きにくくなる

アルコールを飲むと心地よくなります。リラックスして饒舌になったり、明るくなったり、逆に泣き上戸になったりするヒトもいます。つまり、アルコール摂取により感情等の抑制が外れやすくなるわけです。 さて、飲酒は認知能力にどのような影響を与えるのでし…

計算をする赤ちゃん

赤ちゃんは簡単な足し算、引き算を理解できることが心理学的手法を用いた研究からわかっています。 研究には「期待背反法」を用います。 生後5カ月の赤ちゃんの目の前で、人形を使った計算課題を行います。 まずは人形を1体、赤ちゃんに見えるように目の前…

赤ちゃんは「好き」?「見ていたい」?:後編

(昨日のつづきです) なお、何十年も以前の研究ですが、瞳孔測定学(pupillometry)を創始したHessによると、赤ちゃんの写真が提示されたときに、女性の瞳孔は大きく開き、赤ちゃんに対して強い興味を持っているが、男性は赤ちゃんの写真に対して瞳孔はさほ…

赤ちゃんは「好き」?「見ていたい」?:前編

以前、報酬系についてのエントリーで、wantingとlikingが異なる神経機構によって支えられ、ドーパミン系はwantingに関与していると考えられるという知見について紹介しました。 Wantingは、「欲しい」「食べたい」「見たい」「聞きたい」という入手したいと…

高級ブランド車とお値打ちブランド車への脳反応:後編

(昨日のエントリーの続きです: 高級ブランド、実用車ブランド、よく知らないブランド、それぞれのクルマに乗っているところを想像したときの脳活動の違いをfMRIで調べた研究の結果です。) 高級車・スポーツカーのときは、よく知らないブランドのときと比…

高級ブランド車とお値打ちブランド車への脳反応:前編

元来、食べ物など生存に必要なモノに対して反応していたと考えられる報酬系は、ヒトの社会が複雑化するにつれて、クルマやお金、賞賛など文化的なモノやコトに対して反応するようになりました。 以前のエントリーでは、スポーツカーのようなカッコいいモノに…

注意を向けていない製品に対する脳活動からその後の選択を予測する:後編

注意を向けずにクルマの画像を見た場合と注意を向けてクルマの画像を見た場合のそれぞれの脳活動から、見たクルマをほしいと思うかどうかの判断の予測ができるかを調べるという研究です。クルマの画像を見ている際の脳活動をfMRIによって計測しました。 調査…

注意を向けていない製品に対する脳活動からその後の選択を予測する:前編

私たちの購買行動はときに気まぐれで予測がつきません。特定の商品を買おうと思ってお店に行き、実際にその商品を買うこともあれば、別の商品が目に入ってそちらを買ってしまうこともあります。複数の商品のいずれを買うかを悩んだ挙句ひとつを選んだものの…

抑制までの時間を測るには・・・

昨日のエントリーでは、stop-signal課題を紹介しました。 通常、認知実験や心理物理実験では、特定の行動をとるまでの反応時間を測りますが、 反応を抑制するまでの時間はふつう測ることができません。 いつボタンを押したか、というような行為は容易に観察…

Stop-signal 課題:抑制機能と下前頭回(inferior frontal gyrus, IFG):後編

昨日の続きです。 脳の抑制機能を調べるための課題としてストップシグナル課題を用い、行動の抑制にかかる時間を調べました。 その手続ですが、まず、ストップ信号なしの試行(no-signal trial)、つまりGo試行の場合のボタン押しの反応時間の分布を参加者ご…

Stop-signal 課題:抑制機能と下前頭回(inferior frontal gyrus, IFG):前編

昨日のエントリーでは、行動に抑制をかける役割を前頭葉が司っていること、また、抑制機能を調べるための課題としてGo/No-go課題を紹介しました。 脳の抑制機能を調べる課題にはGo/No-go課題のほか、stop-signal課題などの課題があります。 今回紹介する研究…

Go/No-go課題

前頭葉はさまざまな高次認知機能を司っていますが、抑制機能もそのひとつです。ヒトは理性を持っているため、不適切な行動を抑制することができます。スーパーで買い物をしている最中におなかが空いたからといって、急につまみ食いをしてしまうようなことは…