体外離脱体験は脳への刺激で起こせるか?
病院で手術を受けていたら、いつの間にか自分が手術台の上に横たわっている自分の体から抜けだして、天井から手術の様子を眺めていた。さらには病院の壁をすり抜けて、上空から病院や街を見下ろしていた。
幽体離脱の典型的な体験談です。
心霊体験に属する話題に思えますが、どうも脳科学的にアプローチ可能な現象のようなのです。
神経科学の世界では、幽体離脱とは呼ばずに「体外離脱」と呼びます。
英語ではOut of body experience(OBEs)といいます。
神経科学者のBlankeらは、43歳の側頭葉てんかんの患者の右の角回(angular gyrus)に電気刺激を与えたら、体外離脱体験が起きたと報告しました。
右角回への電気刺激によって、触覚や前庭覚の異常が生じることがあります。その他、この患者は、角回の刺激により、脚の長さを短く感じたり、脚やひじが動くような幻覚を感じたそうです。
よって、これら情報の統合の失敗や知覚異常が体外離脱体験の原因であると考えられるそうです。
また体外離脱体験中の患者の証言に「わたしは自分自身がベッドの上に横たわっているのを上から眺めていました。しかし、両脚と胴体の下の方しか見えませんでした。」というものがあります。ホンモノの体外離脱体験は参加者視点に限られる現象なのかもしれません。
Blanke, Olaf, et al. "Neuropsychology: Stimulating illusory own-body perceptions." Nature 419.6904 (2002): 269-270.