脳 Brain, No Life(仮)

とあるニューロベンチャー企業の研究員のつぶやきを記録するブログ

文芸作品を読むと他者の心を読む能力が(一時的に)高まる(3)

「感情的な心の理論」課題では、目から他者の心の状態を読むテスト(Reading the Mind in the Eyes Test (RMET))が用いられました。これは共感研究やシステム化傾向の研究で有名なサイモン・バロン=コーエンらのグループが作成した課題で、目元のアップの写真を見て、その人がどのような感情状態にあるかを4つの選択肢の中から選ぶ、という課題です。36問の課題に取り組んでもらいます。

 

結果、「認知的な心の理論」課題(誤信念課題)に対する成績は、読んだ作品の種類に依りませんでした。一方、「感情的な心の理論」課題(RMET)に対する成績は、文芸作品を読んだ条件で、ノンフィクションを読んだ条件に比べて高かったそうです。

 

文芸作品には、登場人物の感情の微妙なゆれうごきなどの描写などが数多く含まれており、このため文芸作品を読むことで、他者の心の状態を推定する能力を高めるのであろうと推察されるのです。

 

 

ここまで書いていて、ふと、(又吉さんの小説に限らず、)世に出回っている小説が文芸作品であるならば、大衆小説や(nonhumanなテーマの)ノンフィクション作品を読んだ場合に比べて、目から他者の心の状態を読むテスト(RMET)の課題成績が向上するはずである、という予想が成り立つのではと思いました(※注)。

 

興味のある方は、検証されてみると面白いかもしれません。

 

もちろん、言うまでもないことですが、文学性をこの方法ですべて測れるわけではありませんので、この点はご留意くださいませ。

 

 

※注:上記の研究結果は日本人にも当てはまるのか、そもそも日本(語)の「文芸作品」は「大衆小説」や「ノンフィクション」と比べて、より文芸作品らしいのか、など、いろいろ気になる点はありますが。