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脳 Brain, No Life(仮)

とあるニューロベンチャー企業の研究員のつぶやきを記録するブログ

健康なシニアの脳の特徴は?

我が国では、65歳以上の人口は25%を超え、高齢化が着実に進みつつあります。

高齢になると、身体的な健康をどう維持していくかが大きな課題になりますが、精神面での健康の維持も大切になってきます。

 

一般に高齢者はポジティブな性向を持つ(=positivity effect)と言われていますが、実際にはうつ病の高齢者もたくさんいます。

 

それでは、精神的に健康な高齢者と、うつになってしまった高齢者では、脳の働きはどのように異なるのでしょうか?

 

さる脳機能イメージング研究から、「健康な高齢者は、後悔しにくい」ことが明らかにされています。

 

 

 

健康な高齢者、うつの高齢者、そして若者のグループに、成績に応じて報酬のもらえる課題(ゲーム)をやってもらいます。

ゲームの結果には「最適(最大額の賞金がもらえる)」「最適ではないが賞金がもらえる」「賞金なし=失敗」のパターンがあり得ます。

 

研究グループは、高齢者と若者がこのようなゲームを行っている際の脳活動をfMRIで計測しました。

 

 

この結果、健康な高齢者は、最適なときと最適でないときの報酬系である腹側線条体の活動レベルの差を比較するとうつの高齢者や若者よりも低く、一方で、最適ではないが賞金がもらえるときに賞金なしと比較して、報酬系の活動が大きくなることが明らかにされました。

 

言い換えると、うつの高齢者や若者は、最適な結果を出したときに報酬系が強く活動し、まあまあの結果が出たときにはさほど喜びません。一方、健康な高齢者は、最適な結果のときに特別大喜びをすることはなく、まあまあの結果が出たときには賞金なしに比べていい結果であった、と感じるのです。

 

 

健康な高齢者は、最適でない結果だったとき、それは自分の能力とは関係のないことだと考えることができ後悔しませんが、うつの高齢者は自分のせいだった、うまくやればもっといい結果が出たのにと後悔しやすい傾向にあるそうです。

 

自分の行動がもっとよい結果を引き起こせた可能性について考え、悔しがり、行動を改めることは将来・未来が長い若者にとっては有意義なことです。しかし、将来の時間が若者に比べれば短い高齢者にとっては、そのような反省はネガティブな感情に結びつきやすく、精神衛生上の問題があると言えます。

 

最大の結果が出たときに喜び過ぎず、ちょっとした失敗も後悔することなく、まあまあの結果に満足し、おおらかに生きることがシニア層の心の健康につながるのかもしれません。

 

 

 

Brassen, Stefanie, et al. "Don’t look back in anger! Responsiveness to missed chances in successful and nonsuccessful aging." Science 336.6081 (2012): 612-614.