報酬系(3):報酬系の活動=報酬がある、といってよい?
動物はエサや飲み物を与えられると報酬系が活動します。
ヒトは美味しいものや、金銭報酬などを与えられると報酬系(たとえば側坐核)が活動します。
ではその逆は言えるのでしょうか?
つまり報酬系(たとえば側坐核)が活動したら、何らかの報酬があったと言ってしまってよいのでしょうか?
実は、この言明は必ずしも成り立ちません。
これについて理解するために、次の文章を読んでみてください。
「リンゴを見せたら、一次視覚野が活動した。あるとき、そのヒトの脳を調べてみたら、一次視覚野が活動していた。よってこのヒトはリンゴを見ている。」
この文章は一読しておかしいと気づいていただけるはずです。
リンゴを見せれば、視覚情報処理をすることになるのですから、一次視覚野は活動するでしょう。
しかし、あるヒトの脳の一次視覚野が活動したからといって、そのヒトは必ずしもリンゴを見ているとは限りません。実際には、オレンジを見て一次視覚野が活動しているのかもしれませんし、あるいは、ネコを見ているのかもしれないのですから。
そこで、この問題を別の角度から見てみましょう。
「側坐核が活動したときに、どれくらいの確からしさで報酬があったと考えてよいのだろうか?」と考えてみることにしましょう。
報酬があったかどうかに関する事前の情報はありませんので、報酬があった事前の確率は五分五分としましょう。
脳科学のデータベースの情報によると、
報酬のある課題において側坐核が活動した割合は、0.397(約4割)です、
報酬のない課題において側坐核が活動した割合は、0.046です。
よって、側坐核が活動したときに、報酬のある課題である事後確率は、ベイズの定理にしたがって、
(0.5×0.397)÷{(0.5×0.397)+(0.5×0.046)}=0.9
となります。
つまり、側坐核が活動した場合には、報酬があったのだと高い確率で考えられるのです。
Ariely, Dan, and Gregory S. Berns. "Neuromarketing: the hope and hype of neuroimaging in business." Nature Reviews Neuroscience 11.4 (2010): 284-292.