精神的ストレスと唾液アミラーゼ活性の関係
以前のエントリーで、ストレス評価のための生体指標として、唾液アミラーゼについてご紹介しました。(8月25日のエントリー)
ストレスを与えるための課題のひとつにスピーチ課題があります。
人前でスピーチをすることは、よほど慣れている人でなければ非常な緊張を感じるものです。このため、精神的なストレスを与えるのに適した課題であるといえるのです。
今回は、このようなスピーチ課題時のストレスと唾液アミラーゼ活性の関係を調べた研究をご紹介します(長野 2008)。
調査参加者は大学生85名で、十数名ずつのグループを作って、その中でスピーチを行ってもらいました。スピーチのお題は「最近あった面白いこと」などの3テーマあり、その中から話者が自由に選びます。選んだテーマについて3分間話し続けることが課題でした。
感情に関する質問紙を調べるとともに、課題前後での唾液アミラーゼ活性を調査します。
ストレスの度合いの大きい「高ストレス」群では、スピーチ課題の前後で唾液アミラーゼの活性に大きな差が見られました。
この結果から、唾液アミラーゼが精神的ストレスの生理指標として用いることが可能であることが示唆されました。
なお、唾液アミラーゼの値には大きな個人差があり、解析の際には数値のlog変換が用いられていることなどが指摘されています。さらに、論文間の結果を比較するための分析方法の統一化や、代表的な課題に対する標準反応量を調べる必要性などが指摘されています。
長野祐一郎. "スピーチ課題が唾液アミラーゼ活性に与える効果." 文京学院大学人間学部研究紀要 10.1 (2008): 221-228.