心地よい香りについての近赤外線分光法(NIRS)研究
「母乳やバニラの香りは、乳児の前頭葉の血流の増加を引き起こす(NIRS研究)」
言葉を話せない赤ちゃんは、香りをどう感じているのでしょうか?
感想を直に訊くことはできませんが、脳の反応なら調べることができます。
実際、生後間もない乳児を対象にNIRSの装置を装着した状態で香りを嗅がせ、前頭部の血流動態の変化を調べた研究があります。
近赤外線分光法(NIRS)とは、大脳皮質の血流動態を、近赤外線を使って調べる方法です。脳波計測と並んで安全な方法なので赤ちゃんに適用することもできます。
実験に参加したのは生後6時間から192時間(中央値48時間)の乳児たちでした。
嗅がせた香りは以下のとおりです。
・母乳(colostrum, 初乳:分娩後数日間に分泌される母乳)
・バニラ
・水(コントロール)
香りを呈示されている際の前頭部(左の眼窩前頭回)の酸素化ヘモグロビン(酸素を運んでいる血中ヘモグロビン)の反応を見たところ、母乳とバニラの香りには反応しましたが、水には反応しませんでした。母乳やバニラの香りを嗅がせる(30秒間)と、香りの呈示に対し、酸素化ヘモグロビンの濃度が高まりはじめ、香りの呈示が終わった後も血流の高まりはしばらく持続しました。一方、水の香りを嗅がせても、血流の顕著な変化は起きませんでした。
乳児の脳は(心地よい)香りが与えられると前頭部の血流が増加することが明らかになりました。言葉の話せない赤ちゃんも香りを感じ取っているようです。
参考文献:
Bartocci, M., Winberg, J. A. N., Ruggiero, C., Bergqvist, L. L., Serra, G., & Lagercrantz, H. (2000). Activation of olfactory cortex in newborn infants after odor stimulation: a functional near-infrared spectroscopy study. Pediatric Research, 48(1), 18-23.