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脳 Brain, No Life(仮)

とあるニューロベンチャー企業の研究員のつぶやきを記録するブログ

幸福感と関連する脳活動(3)

つづきです。今回は、脳波データの取得についてと、主観評定との相関について紹介します。

 

安静時の脳波計測1分間を8回くり返してデータを取得します。4回は閉眼、4回は開眼条件でした。こうして取得した脳波のデータからアルファ帯域活動(8-13Hz)のパワーを計算します。アーティファクト(ノイズ)の乗っていない時間帯のデータを分析に使用します。分析に用いたデータの幅は1秒間で、0.5秒のオーバーラップがあります。パワーの計算には、fast Hartley transformという(フーリエ変換類似の)手法が使われています。

 

前頭部非対称性の計算としては、左右の対応する電極ごとに、アルファパワーの対数値の差分を計算します(log right – log left)。アルファパワーが大きいことは皮質の活動が小さいこととみなされますので、この計算結果が、左の皮質の活動が右の皮質の活動に対してどれくらい相対的に大きいかの指標になるのです。これまでの研究から、左前頭部の活動の大きさが接近動機や快感情に関連すると考えられているので、この数値が大きいほど幸福感も高まるのではないかという仮説が得られます。

 

 

実験の結果、アルファパワーの(log FC4 – log FC3)、すなわち前頭部の非対称性が、PWBとSWLSと相関を示しました。PWBとはr=0.33, p=0.002、SWLSとはr=0.30, p=0.005でした。

ちなみに、この前頭部の非対称性(log FC4 – log FC3)は、PWBの各項目の中では「自立性・自主性」とは相関はみられませんでした(r=0.08)。一番相関があった項目は「自己受容」で、r=0.39, p<0.01でした。

またPWBの全項目の平均、「自己受容」「環境の支配力」「個人的成長」は、左の前頭部(FC3)の活動とも相関がありましたが、

 

この研究から、人生が価値あるものであるかどうかとう観点からの幸福度と、主観的な幸福感は前頭部非対称性と結びつきのあることがわかりました。幸福感の神経基盤研究の幕開けといえましょう。

 

 

参考文献:

Urry, H. L., Nitschke, J. B., Dolski, I., Jackson, D. C., Dalton, K. M., Mueller, C. J., ... & Davidson, R. J. (2004). Making a life worth living neural correlates of well-being. Psychological Science, 15(6), 367-372.