脳 Brain, No Life(仮)

とあるニューロベンチャー企業の研究員のつぶやきを記録するブログ

認知実験と心理物理実験

心理学や脳科学の分野では、人を対象として実験を行うことが多々あります。

このときに、「認知実験」や「心理物理実験」といった、普段あまり聞かないコトバを耳にすることになると思います。

 

どちらも、心理学の実験に付けられた名称なのですが、それらの間にはどのような違いがあるのでしょうか?

 

多くの場合、認知実験は、複数の条件間で課題成績に違い(有意差)があるかどうかを調べることを目的として行われます。たとえば、記憶課題後に睡眠をとった条件ととらなかった条件で、想起の成績に違いがあるかどうかを調べるような場合に用いられます。棒グラフや線グラフを描いて、条件間で平均値に差があるかどうかを調べる実験が「認知実験」にあたります。

 

一方、心理物理実験は物理量と感覚量の関係(関数)を明らかにする(例えば、グラフ化する)ことに重きが置かれます。電気ショックなどで痛み刺激を与えると、刺激強度が上がるごとに痛みは加速度的に増えていきます。一方、重さの刺激は、重さが増えれば増えるほど知覚される追加の主観的な重さは逓減していきます。線分の長さを知覚させると、線分の長さに比例して、知覚される長さも増えていきます。

このように、条件間の差を検証するのではなく、ある物理量とその感覚量の間の関係性を調べるために行われる実験が「心理物理実験」です。

 

認知実験では、条件間に有意差があるかどうかに興味があり、心理物理実験では物理量と感覚量の関係性そのものに興味があるという違いがあります。

 

心理学や脳科学では、認知実験と心理物理実験を適宜使い分けながら、人の認知や知覚に迫る研究を行っています。