脳 Brain, No Life(仮)

とあるニューロベンチャー企業の研究員のつぶやきを記録するブログ

研究計画

Journal of Negative Results、存在しました!

以前のエントリーで、ネガティブな結果を報告するための論文誌、 "Journal of Negative Results"があれば、研究者が無駄な研究をしないで済むための 有益な情報源になるのでは、というお話しをしました。 ネガティブ・リザルト用のジャーナルがあれば・・・(…

メモ:生体計測機器

ちょっと、仕事の関係でいくかの生体計測機器を調べています。 生理心理学分野で有名な機材といえば、 ポリメイトシリーズです。 「ポリ」というくらいなので複数の生体信号データが 取得できるところが特徴です。 脳波の他、心電、筋電、脈波などが計測でき…

空海の記憶力と修行の関係:思いつきの仮説

昨年は高野山が開山1200年の記念の年であった。 開祖である空海は100日間にも及ぶ「虚空蔵求聞持法」の修行により、経典や外国語を短期間で習得できる記憶力を習得したと伝えられている。 (注:空海は若いときから様々な活躍をしているため、生まれつき記憶…

仮説検証型研究と仮説発見型研究(つぶやき)

今日は、データ分析のため散布図をたくさん見ていたのですが、あまりに数が多くて、なんだか情報がアタマから溢れ出てしまいそうな感じがしました。ふと思ったのが、今後、人工知能が発達すれば、自分がほしい情報にもっと簡単にたどり着けるのでは、という…

涙もろいのは前頭葉のおとろえが原因か?(5):補足

ちなみに論文を探す際に障壁となるのがコトバです。 「涙もろい」というコトバから、「感情失禁・情動失禁」というコトバまではかなり距離があります。普通は知らなければ思いつかない表現です。私も今回調べてみるまでは「感情失禁」というコトバは知りませ…

涙もろいのは前頭葉のおとろえが原因か?(4)

涙もろさと前頭葉の関係について考えてきましたが、1番の問題は、涙もろさをどう測るかです。ダイレクトな「涙もろさ」尺度がないか検索したところ、「思いやり尺度」の中に涙もろさについての設問項目をみつけました。 質問内容には 「自分は涙もろいほう…

涙もろいのは前頭葉のおとろえが原因か?(1)

だいぶ以前のことですが、「年をとって涙もろくなるのは、感情をコントロールする前頭葉が衰えてくるため、涙がこらえられなくなるせいだ」という説をテレビで見ました。そのときは、「そういう研究結果が実際に存在するのだろうか?」と思いましたが、その…

調査の手順:同意書

参加者に、調査会場まで来ていただき、心理実験や脳機能計測を行う場合には、事前に同意書に記入をいただいています。 調査説明書をもちいて、下記の事項の説明を参加者の方々に対しておこない、内容についてよく理解をいただいたうえで、同意書にサインをい…

調査の流れ

昨日は、某所にて脳波計測を含む調査を行ってきました。 9時に現地入りし準備を始め、19時までに12人の参加者のデータをとるという強行軍でした(実際には1名キャンセルとなり、11名のデータを取得しました)。 そんなこともあり、 今回は、調査(実験)の流…

認知課題いろいろ(13)

認知課題の紹介です。 【認知課題(24)】連続引き算課題(serial sevenとserial threeの2種類) 7を連続で引いていく課題 引き算を連続しておこなう課題。2分間つづく。 7を順番に引いていく。参加者は、なるべく速く答えをナンバーキーを使って打ち込…

認知課題いろいろ(12)

今年も最終週ですね。 論文で見かけた認知課題の紹介を続けます。 【認知課題(21)】Inspection Time (IT) 課題: キューが500ミリ秒間提示された後、 右側or左側が欠けた刺激がごく短時間(10-200ms)提示され、 その後、マスク刺激が提示される。 参加者…

認知課題いろいろ(11)

【認知課題(20)】くり返し数字ヴィジランス課題 Repeated digits vigilance task この視覚認知ヴィジランス課題は、不規則な間隔で現れるターゲットを検出する能力を測定する。参加者に対して、3つの連続した数字(例:473)が、1分間に100個の割合でスク…

認知課題いろいろ(10)

【認知課題(19)】Categoric search Broadbent et al. (1986, 1989)による先述(※昨日のエントリーを参照ください)のFocused attention課題に似た課題である。 Focused attention taskでディストラクターが提示された2つの場所(2.04もしくは5.20度離れて…

認知課題いろいろ(9)

認知課題の紹介、つづきです。 【認知課題(17)】焦点注意を測る課題(Focused attention課題) この選択反応時間課題はBroadbent et al. (1986, 1989)によって開発された。 ターゲットの文字は、大文字のAかBであり、スクリーンの中央に表示される。 参加…

認知課題いろいろ(8)

昨日、更新が遅れて、日付ダブってしまいました。。 認知課題のご紹介、続きです。 【認知課題(16)】衝動性を抑える能力を測る課題(Impulsivity) ボタンを押したいという衝動性を抑えられる能力を測る課題です。 これも前頭葉の機能です。 Leark et al. …

認知課題いろいろ(7)

認知課題の紹介です 【認知課題(14)】注意をフォーカスする能力を測る課題(Focus of attention) Eriksen and Eriksen 1974で開発された two-choice reaction time taskに基づく。 各試行の最初に、 モニターに500ms間、3つのwarning crossesが提示され、…

認知課題いろいろ(6)

認知課題いろいろシリーズのつづきです。 名前が同じでも、詳細が異なる課題があります。 【認知課題(12)】Memory課題(immediate and delayed recall) 15個の単語が1個ずつ提示される。提示時間は1秒、ISIも1秒である。 単語は名詞、4〜7文字から構成…

訳語について(2)

これは、ultimatum gameについてだけに留まる話題ではありません。 囚人のジレンマはどうでしょうか? 先日、囚人のジレンマのゲームの利得表を紹介しましたが、それを再掲します。 ゲームの表側にある2つのコトバ(「黙秘する」と「自白する」)は、プレイ…

認知課題いろいろ(5)

つづきです。 【認知課題(10)】Paced Auditory Serial Addition Task (PASAT) これは、持続的注意を調べる課題です。 参加者は、連続して読み上げられる一桁の数字を足し算するよう求められます。 読み上げスピードは、4種類あり、2.4、2.0、1.6、1.2秒で…

認知課題いろいろ(4)

つづきです 【認知課題(8)】選択反応時間(Choice reaction time) 参加者は「yes」「no」のボタンのついた装置を渡されます。 ‘no’ か ‘yes’という単語がモニターに提示され、参加者は一致するボタンをできるだけ速く押すように求められます。50試行あり…

認知課題いろいろ(3)

つづきです 【認知課題(6)】単純反応時間(simple reaction time)計測課題 反応時間の速さを計測する課題です。 参加者は「yes」「no」のボタンのついた装置を渡されます。 課題では、“yes”という単語が提示されたら、可能なかぎり早く“yes”ボタンを押す…

認知課題いろいろ(2)

認知能力の計測に使われているシンプルな課題を紹介していきます。 これらの認知課題が向上するかどうかは、もちろん、実験の設計などによります。 また、課題の回数は実験の目的に応じて変化します。 【認知課題3】単語提示課題(word presentation task)…

認知課題いろいろ(1)

カフェインなど、食品や医薬品に含まれる化学物質には認知機能や気分を変化させる効果を持つものがあります。 そして、ヒトの認知を調べる研究の中には、それらの化学物質を摂取することなどを含む種々の「介入」により、どのような認知的な機能が向上するか…

近赤外線分光法(NIRS)とは

NIRSは高度な情報処理を司る大脳新皮質の活動を捉えることができる測定手法です。 これを用いることで問題解決の能力である実行機能、報酬への反応、感情のコントロール、言語情報処理などについて調べることができると考えられています。 手のひらを太陽に…

再現性が低い理由はどこにある?(1)

前回のエントリーでは、著名な心理学研究の再現性を確かめたところ、100個のうち、61個の研究が再現されなかったという話題について触れました。 なぜ多くの研究結果が再現されなかったのでしょうか? その要因として、実験の方法がまったく同じように再現さ…

心理学研究の再現性はどれくらい?

科学研究の持つ重要な性質のひとつは「再現性」であると言えましょう。 ニュートン力学に従い、地球は1年で太陽の周りを公転し、ハレー彗星は約76年周期で地球に接近します。これらは再現性の高い事実です。再現性の高さが科学研究への信頼性につながるわけ…

認知実験と心理物理実験

心理学や脳科学の分野では、人を対象として実験を行うことが多々あります。 このときに、「認知実験」や「心理物理実験」といった、普段あまり聞かないコトバを耳にすることになると思います。 どちらも、心理学の実験に付けられた名称なのですが、それらの…

調査は自然な環境で実施すべきか?

「実験室のような人工的な環境ではなく、もっと普段どおりの日常的な環境でデータを取得できませんか?そうでないと、実際の製品使用環境(実際のCM視聴環境)での反応がわかりませんよね?」 脳機能計測を用いた製品評価やテレビCM評価などをしている際に依…

ワインの味がわかると言えるためには:解答編

ワインのブラインドテストの判別能力がまぐれ当りではないというためには、3種類のワインの判別では不十分で、4種類のワインを判別しなければなりません。それはなぜでしょう?という問題について考えていました。 (ここまでの2エントリーは、その問題の…

統計的仮説検定の考え方(2)

前エントリーのつづきです。 統計的仮説検定では、なぜ示したい仮説をダイレクトに検証するのではなく、わざわざ帰無仮説なるものを設定し、それを棄却することによってもともとの仮説を採用するという回りくどい手順を踏むのでしょうか? その理由を考察す…