宝くじを買うヒトは不合理?(1):期待値原理とは
みなさんは宝くじを買うことは/買ったことはありますか?
宝くじの払戻率は5割程度ですから、200円の宝くじを買うたびに、期待値では100円の損をする計算になります。
ちなみに我が国における宝くじの売上金額はおおよそ1兆円だそうです。ということは毎年、宝くじ購入者全体で見ると5000億円の損を出している。裏返せば宝くじの販売者は5000億円の利益を上げているわけです。
さて、200円払うたびに期待値では100円を損するわけですから、宝くじを買うヒトは自ら進んでお金を溝に捨てているようなものです。ということは、宝くじの購入者は非合理的な人間である、あるいは宝くじの購入は非合理的な行動である、といってしまってよいのでしょうか?
実際に、そのような記述をしている解説を見かけることも多々ありますが、他の見方はできないのでしょうか?
人間がくじの期待値の多寡のみをもって、購入の可否の判断をしているという考え方を期待値原理と呼ぶことにしましょう。
期待値原理では、(複数の選択肢がある場合)期待値が高い選択肢を選ぶことが合理的な行動ということになります。
期待値原理の考え方にしたがえば、宝くじを購入する人間は「非合理的である」という結論になるでしょう。
しかし、人間は期待値原理にしたがって意思決定する(行動する)わけではないことが300年も前から知られています。
有名なのは、数学者ダニエル・ベルヌーイが提案した「サンクトペテルブルクのパラドックス」です。ベルヌーイは、ある数学的議論にもとづき、人間は期待値原理にしたがって選択をおこなうわけではないことを明らかにしました。
次回エントリーではサンクトペテルブルクのパラドックスについて説明します。