脳 Brain, No Life(仮)

とあるニューロベンチャー企業の研究員のつぶやきを記録するブログ

修行の効果:デフォルトモードネットワークの活動が低下する(1)

以前のエントリーで、瞑想により海馬が活性化する効果があるという研究をご紹介しました。今回は、ある種の修行がデフォルトモードネットワークを沈静化するというお話しを紹介したいと思います。

 

マントラに類似のごく短い単語をくり返し発話すると、デフォルト・モード・ネットワーク(DMN)と呼ばれる脳のネットワークの活動が低下し、(不安やうつなどにつながり兼ねない)思考の反芻を抑える効果が期待されます。

 

 

研究の概要:

 

長時間、くり返し発話を続ける「マントラ」は人間文化における最も普遍的な精神修養の方法のひとつです。

しかし、マントラの持つ強力な情動的・認知的な影響力の基盤となる神経メカニズム(神経機構)は解明されていませんでした

2015年3月、イスラエルのワイツマン(ヴァイツマン)科学研究所の研究者らが、この問題に関する論文を発表しました(Berkovich-Ohara et al. 2015)。

 

研究者らは、実験参加者たちに、マントラに見立てたごく短い単語をくり返し唱えるよう指示し、このときの脳活動をfMRIで調べました。

 

 

fMRI(機能的核磁気共鳴撮像法)を用いて、これまでに瞑想の練習をしたことのない23人の被験者(実験参加者)を対象に、ひとつの単語をくり返し心の中で唱えている時と何もしていない安静時の脳活動の比較を行いました。

 

無言のくり返し発話のときに、安静時にくらべて、広い範囲でfMRIの信号(BOLD signal)の低下が起こる(=脳活動の低下が起こる)ことが明らかにされました。

信号の減少は、自己関連処理に関与するデフォルト・モード・ネットワーク(default mode network, DMN)を中心に起きていました。

 

 

参考文献:

Berkovich‐Ohana, A., Wilf, M., Kahana, R., Arieli, A., & Malach, R. (2015). Repetitive speech elicits widespread deactivation in the human cortex: the “Mantra” effect?. Brain and Behavior.