脳 Brain, No Life(仮)

とあるニューロベンチャー企業の研究員のつぶやきを記録するブログ

心理学

話すヒトのどこを見る?自閉症スペクトラムの人の視線の特徴

ブログを読んでいただいているみなさまへ 私が物理的にブログを更新できない可能性が出てきてしまったため、 本日、3日分のエントリーをアップロードしたいと思います。 「雨の日と月曜日はいつも憂鬱だ」とカレンも歌っていますが、 本ブログを読んで、週…

まばたきをしているときの脳

映画やドラマ、CMなどには場面の区切りをつけるためにカットが入ります。 一方、ヒトはまばたきをします。これはある意味、能動的に外界にカットを入れているようなものです。まばたきをしているときには、脳はどのような活動をしているのでしょうか?それを…

Psychtoolbox(PTB)が動くOctaveとPTBのバージョンの組み合わせ

ちょっと故あって、心理実験用プログラミングの環境を整える必要があり、Psychtoolbox(PTB)のインストールをしました。 私が使っているPCのオペレーションシステムのバージョンに合った、OctaveとPsychtoolboxをインストールする必要があり、かなりの時間を…

アルコールを飲むと前頭葉の抑制機能が働きにくくなる

アルコールを飲むと心地よくなります。リラックスして饒舌になったり、明るくなったり、逆に泣き上戸になったりするヒトもいます。つまり、アルコール摂取により感情等の抑制が外れやすくなるわけです。 さて、飲酒は認知能力にどのような影響を与えるのでし…

計算をする赤ちゃん

赤ちゃんは簡単な足し算、引き算を理解できることが心理学的手法を用いた研究からわかっています。 研究には「期待背反法」を用います。 生後5カ月の赤ちゃんの目の前で、人形を使った計算課題を行います。 まずは人形を1体、赤ちゃんに見えるように目の前…

赤ちゃんは「好き」?「見ていたい」?:後編

(昨日のつづきです) なお、何十年も以前の研究ですが、瞳孔測定学(pupillometry)を創始したHessによると、赤ちゃんの写真が提示されたときに、女性の瞳孔は大きく開き、赤ちゃんに対して強い興味を持っているが、男性は赤ちゃんの写真に対して瞳孔はさほ…

赤ちゃんは「好き」?「見ていたい」?:前編

以前、報酬系についてのエントリーで、wantingとlikingが異なる神経機構によって支えられ、ドーパミン系はwantingに関与していると考えられるという知見について紹介しました。 Wantingは、「欲しい」「食べたい」「見たい」「聞きたい」という入手したいと…

注意を向けていない製品に対する脳活動からその後の選択を予測する:後編

注意を向けずにクルマの画像を見た場合と注意を向けてクルマの画像を見た場合のそれぞれの脳活動から、見たクルマをほしいと思うかどうかの判断の予測ができるかを調べるという研究です。クルマの画像を見ている際の脳活動をfMRIによって計測しました。 調査…

注意を向けていない製品に対する脳活動からその後の選択を予測する:前編

私たちの購買行動はときに気まぐれで予測がつきません。特定の商品を買おうと思ってお店に行き、実際にその商品を買うこともあれば、別の商品が目に入ってそちらを買ってしまうこともあります。複数の商品のいずれを買うかを悩んだ挙句ひとつを選んだものの…

抑制までの時間を測るには・・・

昨日のエントリーでは、stop-signal課題を紹介しました。 通常、認知実験や心理物理実験では、特定の行動をとるまでの反応時間を測りますが、 反応を抑制するまでの時間はふつう測ることができません。 いつボタンを押したか、というような行為は容易に観察…

Stop-signal 課題:抑制機能と下前頭回(inferior frontal gyrus, IFG):後編

昨日の続きです。 脳の抑制機能を調べるための課題としてストップシグナル課題を用い、行動の抑制にかかる時間を調べました。 その手続ですが、まず、ストップ信号なしの試行(no-signal trial)、つまりGo試行の場合のボタン押しの反応時間の分布を参加者ご…

Stop-signal 課題:抑制機能と下前頭回(inferior frontal gyrus, IFG):前編

昨日のエントリーでは、行動に抑制をかける役割を前頭葉が司っていること、また、抑制機能を調べるための課題としてGo/No-go課題を紹介しました。 脳の抑制機能を調べる課題にはGo/No-go課題のほか、stop-signal課題などの課題があります。 今回紹介する研究…

盲視(blindsight)再び:知覚はできないが運動(action)はできる

9/12のエントリーで、盲視の患者の映像を紹介しました。 視覚システムの損傷のために廊下に置かれたモノは「見えていない」にもかかわらず、それらをうまく避けて通る男性患者の映像でした。 http://neuroscience.hatenablog.jp/entries/2015/09/12 盲視とは…

大きさの対比錯覚

人の知覚は、外界にある事物をコピーのように写しとったものではありません。脳の仕組みに合わせて、外界の事物はさまざまな修飾を受けて知覚されているのです。たとえば同じ15度の水でも40度のお湯に触った後にはとても冷たく感じますし、氷水に触れた後に…

サッケード中は視覚情報は遮断される

わたしたちは、モノを見る際に、目でモノを追うことがあり、 これを、追跡眼球運動(eye tracking movement)といいます。 追跡眼球運動には2種類の動きがあります。 「サッケード(saccade)」と「滑動性追跡眼球運動(smooth pursuit eye movement)」で…

「嗅覚?」「臭覚?」どっちが正しい?

人間のもつ五感を挙げてみると・・・ 視覚(しかく) 聴覚(ちょうかく) 触覚(しょっかく) 味覚(みかく) 嗅覚(きゅうかく) です。 なお、神経科学的な観点から言えば、 第六感として「固有感覚」が挙げられます。 ところで、ごくまれに「嗅覚(きゅう…

書籍紹介:「扁桃体」

昨日のエントリーでは、シャープな形のモノ(object)を見ると扁桃体が活動する、という話を紹介しました。 扁桃体は、恐怖の感情などを司っており、自分にとっての脅威からの回避動機の生成などに関わっているものと考えられます。 大学院のとき(お隣の)…

シャープなモノに反応する扁桃体

記憶を司る海馬の先端に、アーモンド状の構造が扁桃体(amygdara)です。 恐怖(fear)な表情の顔画像などを見たときに強く反応することが知られています。扁桃体を切除されたサルが、正常なら怖がるはずのヘビを怖がらなくなる実験映像は有名なのでご覧にな…

オマキザルは不公平に敏感:後編

昨日のエントリーのつづきです。 「公平な条件」(Equality test) これは、自分も仲間もトークンと引き換えにキュウリがもらえるという条件です。 この条件のときは、実験者からトークンを渡されたオマキザルは素直に課題をこなし、キュウリを食べます。 「…

オマキザルは不公平に敏感:前編

昨日のエントリーでは、共感にもとづき仲間を助けるラットのお話を紹介しました。本日も動物ネタをお届けします。 人間は不公平感を感じる動物です。 同じ仕事なり作業なりをこなしているのに、他人だけが評価されていたら、不満や嫉妬の感情を覚えることが…

「ラットにもある他者をおもいやる心」

わたしたち人間には共感能力があり、おもいやりの気持ちから人助けをすることがあります。このような能力は、ヒトや霊長類に固有のものなのでしょうか?米国の科学誌「サイエンス」に掲載された論文は、他の哺乳類にも共感にもとづき、他者を助ける能力のあ…

赤ちゃんはアイコンタクトを好む

以前、アイコンタクトがヒトの報酬系(腹側線条体)を活動させるという研究をご紹介しました。 http://neuroscience.hatenablog.jp/entry/2015/08/03/213242 ヒトにとって他者の視線の情報が非常に重要であることを示唆しています。 赤ちゃんも、アイコンタ…

乳児の顔の識別能力

私たちは、人間の顔の違いを認識することができます。AさんとBさんとが違う顔であることを苦もなく判別する能力を持っています。 しかし、これが人間以外となるとどうでしょうか? 動物園やサファリパークで、動物の群れを見たときに個体を判別できるでしょ…

赤ちゃんの認知を研究する

赤ちゃんの認知能力はさまざまな角度から研究されています。 たとえば、赤ちゃんには簡単な計算能力は備わっているのでしょうか? そのような疑問を持った場合、検証するためにはどのような実験的手続きをとればいいのでしょうか? 物言わぬ存在であることを…

メンタルローテーションと脳

9/7のエントリーで、メンタルローテーション課題の際には、運動前野なども活動することについて脚注で触れました。 http://neuroscience.hatenablog.jp/entries/2015/09/07 それについて文献を紹介します。 Richterらはメンタルローテーション課題を実行中の…

video game(ドライブシミュレーター)中の脳活動

video gameを行っている際、脳はどのように活動しているのでしょうか? ドライブシミュレーションゲームをしているときの脳活動をfMRIで調べた研究があります。この研究によると、ゲームのプレイ中は、休憩中やゲームの映像を(プレイせずに)見ているときと…

盲視

昨日のエントリーで、「レナードの朝」の中の嗜眠性脳炎の患者の様子を描いたシーンを紹介しました。 ふと気になって、盲視(blingsight)の映像はないものかなと思って探してみたところ、ちゃんと見つかりました。 Blindsight - Blind man can see and avoi…

オリバー・サックス氏が亡くなりました

先月の末のことですが、「レナードの朝」「妻を帽子とまちがえた男」などの著作で知られる神経科医、作家であったオリバー・サックス氏逝去のニュースが流れました。 「妻を帽子とまちがえた男」は、相貌失認、前向性健忘、身体失認、幻肢、サヴァン症候群な…

精神的ストレスと唾液アミラーゼ活性の関係

以前のエントリーで、ストレス評価のための生体指標として、唾液アミラーゼについてご紹介しました。(8月25日のエントリー) ストレスを与えるための課題のひとつにスピーチ課題があります。 人前でスピーチをすることは、よほど慣れている人でなければ非常な…

視覚探索と背外側前頭前皮質(DLPFC)

探すべき目標の刺激を、様々な妨害刺激の中から探し出すことを「視覚探索」(visual search)といいます(※1) 森の中で獲物や天敵を見つけるといった生存に関わる場面から、イラストの中の隠れたパターンを探し出すようなゲームを行っているような場面でも、…