不公平感の神経基盤(前編)
これまでに紹介しましたように、最終提案ゲームをヒトにプレイさせると、応答者は不公平な提案を拒否する傾向があります。実験によりますが、3割以下の提案は、おおよそ5割程度が拒否される結果に終わります。
さて、応答者が不公平な提案を拒否するとき、脳はどのような活動を示すのでしょうか?最終提案ゲームにおける意思決定の際の脳活動を調べるため、Sanfeyらは、参加者を募って、下記のような実験を行いました。
参加者は、コンピュータを通して最終提案ゲームを行います。
1回のゲームで10ドルを分け合います。
コンピュータスクリーンには、相手となる提案者の顔写真が表示され、その後、提案内容が提示されます。参加者は、提案内容に納得すれば、それを受け入れ、提案通りの分配額が両者に与えられます。提案内容に不服があればそれを拒否します。すると、提案者も、応答者も報酬は得られません。
実験では、提案者(相手)が人間(だと参加者が思っている)の場合と、コンピュータの場合とがあります。提案者の属性によって、応答者の行動(提案の受け入れ率、逆に言えば拒否率)は変わるでしょうか?
まずは受け入れ率の結果です。
人間が提案者の場合、5:5の公平な提案はほぼ100%受け入れられました。
7:3も9割以上が受け入れられましたが、8:2になると50%、9:1になると40%しか承諾されませんでした。
一方、提案者がコンピュータの場合、8:2でも80%以上、9:1でも70%近くが承諾されました。
応答者である実験参加者は、提案者が人間の場合だと、不公平な提案に対しては不満を抱き、提案を拒否して相手も道連れにして報酬無しを選択します。これにより溜飲を下げるわけです。
相手がコンピュータの場合だと、機械相手に腹を立てても仕方ない、もらえるものは黙ってもらっておこう、という気になるのだと考えられます。
さて脳活動はどうだったでしょうか?
明日のエントリーに続きます。
参考文献:
Sanfey, Alan G., et al. "The neural basis of economic decision-making in the ultimatum game." Science 300.5626 (2003): 1755-1758.