脳 Brain, No Life(仮)

とあるニューロベンチャー企業の研究員のつぶやきを記録するブログ

環境光は情動処理に影響を与える

(特に北欧などでは)冬になると日光の暴露量が減ることで、季節性うつ病が起こることが知られています。これに対する治療法のひとつが、高照度光療法です。つまり、強い光に当たることが、気分障害の軽減に役立つというわけです。

 

このように光が長期的な気分の状態に影響を与えることは知られていました。では、短い時間光を浴びることで、感情に対する何らかの急性の影響はあらわれるのでしょうか?

 

Vandewalleらはこの点を検証するため、つぎのような実験をおこないました。

17人の参加者が、fMRIの装置の中で、40秒間隔で交互に青色と緑色の光を浴びながら、情動的(emotional)もしくは情動的に中立な音声を聞きました。この結果、緑色光に比較して、青色光は側頭皮質の音声処理領野と海馬において、情動的刺激に対する反応が増加することがわかりました。

情動的な情報処理をしている間、音声処理領野、扁桃体視床下部の機能的な結合が、青色光を浴びている状況のときに選択的に増強されました。

 

環境光は、脳の特定のネットワークの活動を強化することで、感情の情報処理に影響を与えるようです。

 

 

参考文献:

Vandewalle, G., Schwartz, S., Grandjean, D., Wuillaume, C., Balteau, E., Degueldre, C., ... & Maquet, P. (2010). Spectral quality of light modulates emotional brain responses in humans. Proceedings of the National Academy of Sciences, 107(45), 19549-19554.