脳 Brain, No Life(仮)

とあるニューロベンチャー企業の研究員のつぶやきを記録するブログ

空海の記憶力と修行の関係:思いつきの仮説

 

昨年は高野山が開山1200年の記念の年であった。

開祖である空海は100日間にも及ぶ「虚空蔵求聞持法」の修行により、経典や外国語を短期間で習得できる記憶力を習得したと伝えられている。

(注:空海は若いときから様々な活躍をしているため、生まれつき記憶力が良かった可能性も高いと思います。)

 

 

2010年、スウェーデンのリンシェーピング大学の研究者らは、真言マントラ)を唱えることを特徴とする瞑想の訓練を積んだ参加者が心の中で真言を唱えると海馬(かいば)や海馬傍回(かいばぼうかい)という脳の領域の活動が高まることを発見した。

 

これらの領域は記憶の書き込みに関連する部位であり、日々、真言を唱える修行を行うことが、記憶力の向上につながる可能性を示唆している。なお、この研究の参加者の修行期間は6ヵ月から2年程度だったので、その程度の期間にわたって修行を積むことで、記憶向上効果があらわれると考えられる。

 

また、1980年代におこなわれた、ギャザコールとバッドリーによる研究から、無意味音声刺激を(ごく短い時間記憶に保持する)ワーキングメモリの容量と言語習得能力の関係が示唆されている。

 

彼らの研究から、単語としては存在しない文字の羅列を聴かせて、それを口頭で即時に反復再生する能力が高いヒトは言語習得能力が高かったという研究結果が得られた。

 

虚空蔵求聞持法は、日本人にとっては無意味な文字列であるごく短い真言をくり返し唱えるため、このような、音声刺激に対するワーキングメモリを高めた可能性はあると思われる。

 

いまだ仮説の段階ではあるが、虚空蔵求聞持法に取り組んだことが、空海の驚異的な経典や外国語の習得能力を支えていたのかもしれない。

 

※本当かどうか、科学的な検証をしてみたいところですね。