メモ:共感覚の有名人(2)
シェレシェフスキーについては過去のエントリーでも取り上げました。
今回は、共感覚者としての可能性について述べます。
ソロモン・シェレシェフスキー(Solomon Veniaminovich Shereshevskii)
神経科学者のルリヤがシェレシェフスキーの能力について研究をおこなった。
頭文字にちなんで、S(「エス」または「シー、シィー」(ロシア語でSはシーと発音する))と呼ばれていた。
シェレシェフスキーはモスクワの新聞社に勤めていたが、会議中に何もメモをとらないことが上司の目に留まり、その非凡な記憶力が知られることとなった。
シェレシェフスキーは、写真記憶(フォトグラフィック・メモリー)を持っていたと考えられ、文章、無意味な文字列、ランダムな数字の列などを的確に記憶し、何年経っても再生(想起)することができた。
数字の列などを覚えるときに役に立ったのが、共感覚の能力である。
覚えなければならない数字の列や文字列を色のついたパターンとして記憶することができたといわれている。
なお、シェレシェフスキーはきわめて多様な共感覚を持っていた。
音刺激が与えられると、視覚だけでなく、触覚や味覚の感覚も誘発された。
たとえば、2000ヘルツの音(聴覚)は、ピンクと赤が混じった花火のように見え(視覚)、ザラザラと不快な感じがし(触覚)、しょっぱいピクルスの味がした(味覚)、という。
このような共感覚の能力により、ひとつの情報を多面的にとらえることができたため、情報をより強固に記憶にとどめることができた可能性がある。
後年、シェレシェフスキーはプロの記憶術師になった。
参考文献:
A. R. ルリヤ『偉大な記憶力の物語』岩波書店