リハビリに取り組むときは前向きに
脊髄損傷後のリハビリに、患者さんがモチベーションをもって取り組むと
回復が促進されるという事実が以前から知られていました。
しかし、その神経的なメカニズムはよくわかっていませんでした。
報酬系の一部である側坐核は、
モチベーションによって引き起こされる努力を調節しますが、
運動の直接のコントロールには関与していません。
生理学研究所の研究者らは、アカゲザルを対象とした実験をおこない、
頚椎レベルでの脊髄損傷後の指の細かい運動の回復過程において、
側坐核から感覚-運動皮質へ信号が送られていることを明らかにしました。
さらに、回復の初期に薬理学的な方法で側坐核を不活性化すると、
感覚運動皮質における高周波振動の活動が消えてしまい、
リハビリテーションによってもたらされる指の巧緻性の回復を
一時的に妨げてしまうこともわかりました。
これらの結果は、脊髄損傷後の回復期において、
側坐核は感覚運動皮質の高周波の活動を高く調整することで、
指の運動のコントロールに直接関与していることを示しています。
リハビリに取り組む際に側坐核で生み出されるモチベーションの信号(signal)が
感覚運動野の神経活動を高めることで回復が促進されることが明らかになったわけです。
論文の要約にもとづき本エントリーは作成しました。
生理学研究所のプレスリリースも併せてご覧ください。
参考文献:
Sawada, M., Kato, K., Kunieda, T., Mikuni, N., Miyamoto, S., Onoe, H., ... & Nishimura, Y. (2015). Function of the nucleus accumbens in motor control during recovery after spinal cord injury. Science, 350(6256), 98-101.
生理学研究所プレスリリース:
"やる気や頑張り"がリハビリテーションによる運動機能回復に大切であることを脳科学的に証明
http://www.nips.ac.jp/release/2015/10/post_306.html